389 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/14(水)10:14:51 yni
おまたせ!
ネット使えるようになった!

389 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/14(水)10:14:51 yni
つづき
昨日からほぼ寝てなくて疲労困憊、新しい赤ちゃん犬の体調も不安、夕方あと少しで日が沈んで暗くなる
そんな状況であるにも関わらず、おれは野宿できそうな場所を全く見つけられないでいた
この辺り一帯は治安が悪すぎる

詰んだかも…
危険な目に遭うのを覚悟でこの辺りで野宿するか…
いや!ダメだ!またラテや動物たちに危害を加えようとする輩が現れてもおかしくない
さっきは整備員さんのおかげで助かったけど、次はないだろうし、ここで野宿は死んでもダメだ!

やばい、もう考える力も弱まってきた…

そんな時、おれの目の前を一人の男が通り過ぎて行った
おれはその人に目が釘付けになった

目は口程に物を言うというが、おれはこれまでの営業系の仕事の経験から、相手の目から情報を得る技術にはそれなりに自身があった
だからこの時、おれはその男の目を見て確信した

…この人は味方になってくれるし、協力もしてくれる!
なかなか出会えないレベルの「いい人」だ!

というわけでおれはその男を呼び止め、安全な場所を訪ねてみる
そして、予想通り男はとても優しく、おれをフェズ郊外のかなり奥まった場所にある村へと導いてくれた

さぁ、果たして今夜は安全に野宿できるんだろうか…
緊張と疲れで疲弊しながら、おれはその村、ベルカーニに足を踏み入れた

392 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/15(木)21:53:22 W9N
つづき
さて、結論から言うとおれはベルカーニ村で盛大に歓迎された

おれのフェズでの様子がネットニュースに掲載されたらしく、ベルカーニの若人の何人かはおれのことを知っていたからだ

八百屋を生業としていて寝床を提供してくれるアジーズ、カフェを経営していて水回りと食事やバナナジュースを恵んでくれるアブドゥル、
インターネットカフェをやっていてWifiを使わせてくれるヨウネス、そして日本が好きで英語が出来、ワンピースやナルトからカイジ(ギャンブル漫画)に至るまで漫画を読んで知っているサマッド
ベルカーニ村にはたくさんの優しい人々がいて、その日おれは何不自由なく過ごすことが出来た

ちなみにおれが寝泊まりしているアジーズの八百屋の前には駐車場があり、警備員の男が夜中も見張っているのでかなり安全だ

写真は一心不乱に肉にむしゃぶりつくラテとプレッソ
プレッソは本当は牛○だけでも問題ないらしいけど、本当に生後一か月なのかは分からないし、夕方の休憩時にもラテの肉を取ろうと近づいたりしていたため、小指の爪ぐらいのサイズの肉片を少しだけ与えて様子をみることにした

no title

さて、次の日
この日はプレッソを観察する為の予備日として空けていたけど、プレッソの体調がすこぶる良好だったため、おれは夕方出発することにした
この辺りはかなり暑いので、動物たちが弱らないうちに出てしまうべきだと考えたのもおれが出発を急いだ理由の一つだ

夕方、世話になったアジーズ達に別れを告げて荷車の最終点検をする
内容はタイヤの空気圧やスタンドのボルトの締まり具合、動物たちの体調などだ
…まぁ20分ほど前に動物たちの状態も含めてざっと点検したから大丈夫だろうけど

おれ「荷車は異常なし!さて、ブラック!カプチーノ!元気か?」
ブラックとカプチーノの様子を見る為に荷車の前に移動する

おれ「カプチーノは元気そうだな!ブラックは…あれ、何でお前鶏小屋の隅っこでそんなうずくまってるんだよww」

寝てるのか?こんな時間に?それにしても鶏小屋の壁にもたれかかるようなこの姿勢はかなり熟睡してる時のそれだけど、どうしたんだろう…
少し心配になり、ブラックを軽くつついてみる

すると、ブラックの長い首が―寝る時や地面の餌を食べる時ですらきちんとS字型に固定されていて絶対に伸びきったりしない首が―力なくだらんと伸び、地面に横たわった

393 別スレ8 2016/12/16(金)01:47:22 0qB
ブラックぅうーー!(´;Д;`)
ラテや新メンバーのプレッソが日々成長して、
モカは一息つけたと思ったら…。これだけ動物
を連れての旅だから、トラブルも尽きないとは
思いますが。やるせないですね…!



396 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/19(月)09:01:46 PSv
>>393
鶏たちだけはトラブルと無縁だと思ってたんだけど、ダメだった…

395 ネコスキー 2016/12/16(金)14:02:58 3jx
ブ、ブラックー!(´;ω;`)

ええっ?!

396 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/19(月)09:01:46 PSv
>>395
ブラック…

394 Parama000 2016/12/16(金)07:44:32 ID:tw@Parama000
物理的かつ精神的に軽快な旅や生活を心掛けているから、逆にGoさんのスタイルが興味深い。
「禍を転じて福と為す」と思いきや、また「一難去ってまた一難」。
「人事を尽くして天命を待つ」これしかないね。

396 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/19(月)09:01:46 PSv
>>394
ハードな旅がしたいというわけじゃなくて、おれが欲してるものを手に入れるには普通にやってたんじゃ時間が足りないからガンガン攻めるしかないって感じですね
自分の欲から目が離せない、そこに向かって真っすぐ走りたくてたまらないって感じです
幸せなことだと思ってます

397 Parama000 2016/12/19(月)10:12:20 ID:tw@Parama000
欲してるものとは?

私は一般の人生や幸せでは最早満たされないです。煩わしい俗世の生活を軽快にして精神的頂点を目指す。

ブラック安らかに眠れ。

399 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/20(火)13:41:06 gzd
>>397
言葉で説明するのは少し難しいですが、ざっくりいうと特定の経験を経て得られる景色、人生観、境地が見たい、知りたい、体感したいということです。
この夢に関しては何時間でも語れるんですが、まぁ大雑把に説明しますw
冒険のスキルを身に着けて限りなく精神的に自由になった人が世界をどんな風に眺め、どんな風に暮らしていくのかを知りたいということです。
(これは世界中どこでも暮らせる、どこでも行ける、不可能だと思われているようなことでも計画し挑戦しそれなりの成果を収められるということ。
よく友達に「じゃぁ金持ちになればだいたい叶うじゃん」っていわれるけど、物資的に豊かであればあるほど例えば熱帯雨林の森の中とか雪山とかで暮らすことに対する耐性が失われるだろうから、おれが目指しているのはお金持ちとは対極の境地だ。
ただしこの夢の為には金持ちの世界も知っておく必要があるから、そっちの経験も積むように工夫しているけど、おれ自身が金持ちになる必要はないと考えている。)
体力や知力、運が追い付かなくなって途中で死んでしまう可能性は高いですが、一度しかない人生、どうしても自分のやりたいことは成し遂げたい、欲しいものは手に入れたいと考えています。

特におれは日本で生まれ育ってしまったので、かなり飛ばして攻めていくしかないと思っています。
日本はモノリンガルでも生きていける(モロッコ人はだいたい3-4か国語話せる。他の国もそこそこ先進的な国であっても2か国語くらいは話せて当然って国が大半だ。)し、
製品全般に対する高度な品質管理や清潔すぎる居住環境、比較的合理的なマナーによって普通に暮らしていたんじゃ腐敗物に対する耐性や粗悪品を利用せざるを得なくなった場合の問題解決能力なんかが全く身につかない。
有事の際のサポートも全体的に心強過ぎるから、自力で協力者を募る営業力も育たないし、「できること」と「できないこと」がはっきりとマニュアル化されているせいで思考停止していても問題解決できるから幅広く発想する能力がどんどん衰えていってしまう。
国民の安全管理が行き届いていることによって業務用の薬品や装置を入手するのに骨が折れるし、技術を持った人も少ないから自力で問題解決するのに必要な技術が得られない。
(特に途上国ではセメント自分で塗ったり、鍛冶屋からでかい溶接機借りてきて使ったりする光景も見られるし、品質は低いとしても一般の人でもそういう技術を持っていることが多い。彼らは何が簡単に出来て何が簡単に出来ないのかを知っている。)

だから日本で生まれ育ったおれは冒険家としてはかなりハンデキャップを背負っているので、ある程度はリスクを覚悟の上で突っ込むしかないんですよね。
今回のキャラバン旅は超安全で、死の危険のあるようなリスクはないですが、動物や荷車設計に対する経験と知識が圧倒的に不足していたので計画倒れになるリスクは正直ありましたね。何とか予想以上にうまくいきましたが。

ただし、日本だからこそ有利な面も多少あって、最新のデジタルデバイスが入手しやすい点(アプリはもちろん、組み込み機器のプログラミング等も出来るから冒険に生かせる可能性はある。
ラクダの時はオフラインの地図アプリとラクダ用の発信機をマイコンと3Dプリンターで外装含め作ったり、今回も実はロバ用の発信機作ってから来たりしてたんだけど、全く役に立ってないwww)
や、職場を選べばマニュアル化された高品質な技術が手に入る点なんかがありますね。

冒険家としてのおれの現在の研究対象は「現代だからこそ出来る冒険」であり、それを探究することで上に書いた景色が見られると考えているので日本でもそこそこアドバンテージはあるんですけどね。

398 別スレ8 2016/12/20(火)05:47:52 oT2
ブラック……(´;ω;`)
それでも旅は続くんですね。

400 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/20(火)14:11:23 gzd
>>397,>>398
ブラック「まだ死んでないンゴ…」

つづき
ブラックは力なく横たわって目を閉じ、小刻みに痙攣していた
首が滅茶苦茶熱い

よく見るとカプチーノも少しだけ呼吸が乱れている
太陽にやられたんだろうか…今までそんなことなかったのに…
ほんの20分前見たときは変わった様子はなかったのに…

とにかく、一番重要なことは、ブラックがまだ生きているということだ
生きている限り、助けられる可能性はある!

状況から症状は人間の熱射病に相当する可能性が高かったし、それなら何をするべきか良くわかっている
おれはこれまでに二度、人里離れた土地で熱射病で倒れたことがあるからだ

まずは冷暗所にいかないと、水も大量に必要だ

ブラックを鶏小屋から出すと、子供たちが集まってきた

手伝ってくれる…そんな訳はない
モロッコでは動物の命の重さなんて日本でいう植物くらいの重さでしかない

子供A「早く首切って殺しなよ」
子供B「そのにわとりはもうダメだから早く食べようよ」
子供C「代わりのにわとり持ってきてやるから心配すんな!」

おれ「黙れ!!どけ!!」

周りの子供たちはどの後も囃し立てていたが、そんな周りの声を無視しておれは公共の水汲み場まで走った
そしてその水汲み場で水を使ってブラックを冷やす

水をかけたり口移しで少し飲ませてやると、ブラックは少しだけ羽を動かして反応した

小動物なら無理だろうけど、ブラックは高さが40cmもある大型の鶏だ
まだ、まだ持ちこたえてくれる可能性はある!!

経口補水液(効率よく水分を補給することが出来る液体で、人間の熱中症などに有効とされている。水1リットルに対して砂糖をペットボトルキャップ4杯分、塩をキャップ1/2杯分入れて混ぜると出来上がる)飲ませるかかなり迷ったけど、
鳥類に対して人間と同程度の効果が期待できるとも限らないし、悪化する可能性もあったのでやめた
おれにもっと獣医学の知識があれば

体を冷やし、水分補給をしっかりさせること1時間
はじめのうちは水をかけると目を開けて弱々しく首を降って水を払ったり、羽を動かしたりしていたブラックも、時間が経つにつれてそれもしなくなり、ほとんど動かないようになっていった
一瞬自分の首を持ち上げる力すら無いようだ

ダメだ!嫌だ!
こんなところで死なせてたまるか!

404 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/22(木)09:45:16 nMu
つづき
ブラックはどんどん動かなくなっていく

・死ぬ直前であるため動けない
・体を休めて体力回復を図っている

…後者であってほしい

とにかく体の熱は完全に下がっていたので、体をタオルで拭いて夕日に当ててしばらく待つ
時々もぞもぞと動き、懸命に首を持ち上げようとしているが、持ち上がらなかった

ちなみにこの日は休日だったため動物病院は閉まっている
なのでこれ以上ブラックに出来ることはないと判断し、おれは一旦荷車のところに戻ることにした
荷車まで帰る途中、子供たちだけでなく若者やおっさん、おばさんからの「さっさと殺しなよ」合唱が腹立たしくてどうしようもなかったけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない

荷車に戻りブラックが産んだ卵の黄身と水をやる


そして、幸いブラックは持ち前の体力で踏ん張ることができたようで、その後2時間ぐらいかかったが、少しずつ回復していった
ブラックは少しずつ首を持ち上げたり、羽を動かしたり、足を少し動かしたりできるようになっていった
ただし、立ち上がることはできないようだった

一命はとりとめたようだけど、脳に障害が残って下半身が動かないとかそういう可能性は否定できない、五体満足であってくれ…
いつも寝ている時と同じ姿勢で眠り始めたので、鳥小屋に戻し、明日元気になることを祈り続ける

そして、次の日
朝になり鳥小屋を見に行くと、そこには何事もなく毛づくろいをしているブラックの姿があった

あんなに弱った状態から回復した動物を見たのは初めてだったので、本当に奇跡のように感じられたし、めちゃくちゃ嬉しかった
鶏は鶏肉としての用途があるので命を軽視されがちだし、おれ自身鶏肉は大好きだけど、それでもブラックは特別なんだ
この時点でブラックとは1ヶ月ほど寝食を共にしていたし、今では大事な家族の一員だ

本当に、よかった…

そして、おれは他の動物の体調も見てまわる
モカ…体力が有り余っているらしくかなり元気、カプチーノ…昨日卵を産んだので健康状態は良好だろう、プレッソ…元気過ぎてうざいレベル、ラテ…

ラテは…
ラテは、体から膿を流し、ぐったりとしていた

409 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/23(金)12:29:46 5I7
つづき
八百屋のアジーズに動物たちをみていてもらうようにお願いし、おれはラテと一緒にフェズ中心街へタクシーで向かった
この日は休日ではなかったのでラテが世話になった動物病院もあいていた
動物病院へ行き、獣医さんに診断してもらう
以下動物病院での会話

獣医「この猫は少し疲れているけど、体調に関してはそこまで問題はないかな。今注射を打てば通院しなくて大丈夫だよ」
なるほど、とりあえずは大丈夫そうだけど、いつまた再発するかは定かじゃない
だからおれは動物病院に到着する前から先生にお願いをしようと考えていた

おれ「先生、おれに注射の仕方を教えてください」

獣医「…注射?君が治療するということかい?」
おれ「はい。今回は大丈夫なようですが、次いつ再発するかもわかりません。
もしかしたらもう大丈夫かもしれないけど、大丈夫じゃないかもしれない。3日後再発するかもしれないし、1か月後再発するかもしれない。
気候的にも動物たち全員をこの辺りに長期間留めておくことはできないし、弱った状態のラテをここで野生に返してやるなんてのは無責任で最悪の決断です。
だからロバたちと一緒に連れていくしかないと考えていますが、ここフェズはモロッコ第二の都市。今後モロッコでここまで優れた動物病院に出会うことはないでしょう。
そんな中、もしラテにまた何かあって、おれが薬や注射の知識がないせいで死なせてしまったら…
おれは…おれは、そんなの絶対に耐えられないんです!
ラテには猫として幸せに生きてほしいんです!」

そんなことをおれは獣医さんにまくしたてた

獣医さんはしばらく沈黙した後、ゆっくりと話しだした

獣医「これは…、君には言わないでおこうと思っていたんだけど…。」

獣医「この猫は…とっても、とっっても『悪い状態』の可能性が高い。というか…非常に悪い病気を…いくつか…患っている可能性がかなり高いと僕は見ているんだ…」

当時獣医が何を言っているのかおれには理解できなかった
理解しようとする意志がなかった
なんかよく分かんないってかよく聞こえなかったけど、とりあえず注射教えてくれよ…

そんなことを考えていた

獣医「…それでもいいというのなら、こちらも出来る限りの治療をするし、注射のやり方も君に教えてあげよう。」
おれ「はい、お願いします!」
こうしておれは、猫に対する注射の射ち方のコツや使用する抗生物質の種類、量なんかを獣医から教わった

413 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/24(土)14:48:41 W3G
つづき
獣医さんから注射器と抗生物質をもらい、動物病院を後にする

ベルカーニ村に着くとアジーズが不安げに「どうだった?」と聞いてきた
アジーズは本当にいいやつだ

おれ「何とか大丈夫そうだったよ。これからはおれも多少手当て出来るようになったし、明日出発しようと思う」
そういうとアジーズは、「ちょっと待っとけ」といってカフェのアブドゥルと何やら相談を始めた

そしてその一時間後

アジーズ「Go!おれとアブドゥルからの贈り物だ!!!」

no title

no title

…は…?

アジーズ「燕って鳥でな、頭いいんだぞー!」

いや頭部の形状みる限り鳩だし…

…は…?
え、これ以上キャラバンメンバー増えんのか…?

no title

no title

417 名無しさん 2016/12/25(日)08:51:31 HlI
>>413いい色やな

419 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/25(日)16:03:00 9He
>>417
ありがとう!
観賞用に品種改良された鑑賞鳩ってやつらしい
うちのキャラバンの花形なんだぜ!

418 別スレ8 2016/12/25(日)13:53:36 Tk0
新たな仲間が∑(゚Д゚)
ラテ、このまま旅を続けられると良いなぁ。
プレッソめっちゃ冷やしてる( ̄▽ ̄)

419 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/25(日)16:03:00 9He
>>418
仲間増えすぎなんだよなぁ…
賑やかで楽しかったけどw
プレッソはまだあんまり目が良くないのか、ぷすんぷすん言いながらいろんな所に向かって突進しててめっちゃ可愛かったw

つづき
ブラックがあんな事になった直後だしラテも心配だしで、鳩をもらうのは断ろうかとも思ったんだけど、結局おれはありがたくいただくことにした
この観賞用の鳩はモロッコ人が買うには高価なものだ
プレゼントとしてはかなり気合の入っているものと言わざるを得ない

アジーズやアブドゥルがおれのことをそんな風に大事に思ってくれたというのはすごく嬉しいし、この鳩を絶対大事にして、ゴールのタンジェで自然に帰してやろうと思った(生まれたときからブリーダーの家で育てられていただろうから帰すってのも変な表現かもしれないけど)

おれ「分かったよアジーズ、この鳩はタンジェまで連れて行って、そこで逃がしてやることにしようと思う。
よろしくな、『ウィンナ』!」

WindとかWingとか鳥を連想するようなワードにも掛かっているからウィンナコーヒーからウィンナと命名することにした
黄色い羽根を持ったウィンナは小さくても存在感抜群だから、キャラバンの花形になること間違いなしだ!

アジーズ「それでな、Go、出発は一日延期させてみないか…?
本当はずっと村にいてほしいと思ってるけど、それは無理だろうし、せめて明日くらいは…」
端折っているけど、アジーズだけじゃなくてカフェの人たちやネットカフェの人たち、毎日窓越しに話してた女の子
(モロッコは比較的オープンなイスラム教だけど、家によっては年頃の女性に外出を許可しない家もあるから、この子に関してはいつも路地裏から民家の窓越しに話していて仲良くなった感じだ。かなり美人だったけど外で会ったことはないし全く進展とかはしてないから安心してくれw)
なんかももう少しいたら?と、熱心に言ってくれた

そんなわけで、おれはベルカーニ村の滞在を一日だけ延長することにした
ウィンナの様子もしっかり見ておきたかったし、ちょうどよかった

no title

422 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/27(火)00:24:22 EzD
つづき
さて、今日は一日ゆっくり休んで、明日出発!
というわけでこの日は動物たちとゆっくり遊ぶことができた

ブラックとカプチーノはいつまでたってもおれの指が食べ物でないと気付かないのか、ピーナッツをあげているとピーナッツがなくなってもおれの指をつつき続ける
プレッソは好奇心旺盛で、色々な場所に行こうとするので止めるのが大変だ
首がまだほとんどなくて首輪やリードを付けていない為、ずっと近くにいさせないと危険だ
…まぁ、まだよたよた歩くことしかできなくて走ったりはしないから長時間目を離さなければ大丈夫なんだけど

いろんな景色を見たり走ったりするのが好きなモカは最近ベルカーニ村に飽きているようで、アジーズの八百屋前のだだっ広い空き地で放牧しているとすぐ村の外に出ようとする
おれが追いかけても逃げるそぶりは見せないから、これはやっぱりもっと色んな場所に行ってみたいとか、
もっと運動したいとか、他のロバに会いたいとか、モカからのそういうメッセージなんだと思うことにしている
明日出発だから安心しろ、モカ!

新入り、ウィンナはもともと売りものだったこともあり、かなり人になれているようだ
昨日出会ったばかりなのに、ウィンナはもうおれの手や肩に乗って餌を食べてくれた
仲良くなれている気がして嬉しい

そして、ラテ
おれが朝打った注射が効いたのかは分からないがラテは昨日に比べるとかなり膿の量が減っていた
プレッソがキャラバンに加わったことで、どうしても昼間ラテにかまってやる時間が取りにくくなった
だから、夜はラテの時間だ
夜おれが寝ようとすると、いつもラテがおれの胸の辺りにすり寄ってきておれの顔にキスをしようとする
ラテはもう、繋がれていなくてもおれのそばを離れたりしない

イミルシルでラテに出会ったとき、一度ラテは荷車から降りて逃げて行ってしまった
あの時はラテに対して余計なことをしてしまった、連れて行くならきちんと繋いでおくなりなんなりしておくべきだった…
なんて思ったものだけど、その後ラテに付けたヒモは、おれ達の信頼の無さの証だった
それが今は必要なくなっている
肩にも乗り慣れたようで、おれが普通に歩いていてもトイレの時以外は降りようとしないからヒモは必要ない
だから今ではおれはそのヒモを見る度に、おれとラテの信頼の成長を感じることができた

この先もっとラテと仲良くなっていくだろうし、タンジェに着く頃が楽しみだ
タンジェに着いた後のことも、この頃には少しずつ考えがまとまりつつあった

おれ「ラテ、お前が一番幸せになれる道、おれなりに考えてるからな」
おれの胸にぴったりと張りつくラテに向かってそう呟き、いつも通りおれとラテは眠りに就いた

426 1◆jHsnWuH7MU 2016/12/29(木)20:53:21 qs1
つづき
さて、次の日、出発の朝
朝早く起きてくれたアジーズとハグして出発

ちなみに実はベルカーニ村に着く前からおれは当初の経路を変更していた
もともとフェズからそのまま北上してタンジェに向かおうと考えていたんだけど、プレッソが仲間になったことでもう少し旅をしたくなったのが変更の理由だ
フェズからタンジェまで最短で約300kmほど、10日もあれば到着できてしまう距離だ
せっかくプレッソが仲間に加わったのにこれでは面白くない、ということで進路を西に変更し、ラバト(首都)方面、海へ向かうことにした
ちなみに、大都市がキャラバンメンバーにとっていかに危険かをフェズで嫌というほど学んだのでラバトへは寄らない

モカの体調も万全、というか久しぶりの旅にモカはノリノリだったようで、その日は30km以上歩くことができた
夜中、ラテが久しぶりに遊びの一環として襲いかかってきたのがうざかった
注射のおかげで膿ももうほとんど出ていない
ラテ、元気になってほんとよかった

そしてその次の日
朝、久しぶりに寒さを感じ、多分その影響で寝坊してからの出発

途中、目の部分が球状になっていて手がロボットアームのようになっている茶色い大型のトカゲを見つける
トカゲにしてはやけに動きが遅い

トカゲ…ていうかこれカメレオンやん!
ということに数秒で気づきテンションがめちゃくちゃ上がった
野生のカメレオンを見たのは初めてだ

モロッコにはごくまれにカメレオンを肩に乗せたパフォーマーがいるという情報をトドラ渓谷で知って以来、カメレオンは是非仲間に入れたいと思っていた動物だ

が、ここで少し冷静に考える

鶏たちやラテにとってカメレオンは餌、もしくは遊び相手でしかないし、かなりしっかりと管理しないと危険だ
それに肩に乗せるといってももうキャラバンにはラテやウィンナがいるし、これ以上肩に乗せるメンバーが増えても持て余してしまうだろう
ここからはフェズのような大都市は通らないし、餌の確保もかなり難しいだろう
いや、でもカメレオンとかめっちゃかっこいいしなぁ…

…なんてことを考えた結果、結局餌確保の難しさが決定打となってカメレオン君をキャラバンに加えるのをやめ、逃がしてやることにした

no title

439 名無しさん 2017/01/08(日)10:12:00 guj
>>426
広いなあ

441 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/09(月)20:19:14 mDr
>>439
超広大で気持ちいいんだ!
エジプトの砂漠で遊牧してた時は周りなーんにもなくて、砂と空と、遠くに岩山って景色が多かったから、
なんだかゲームのデバッグ用ステージというか、大きなカプセルの中に入れられてるような気分(まぁ球体である地球上にいるんだから正しい認識だよな)だったんだけど、
モロッコは広大なのは同じだけど風景がもっと多岐にわたっていて、まさにオープンワールドゲームの世界って感じだった!
日本で電車とか乗ってるとモロッコでの日々が夢だったんじゃないか…なんて思ったりするw
でも、そんな風に感じてる時点でおれが見たい世界のとっかかりが掴めてるってことだから次の冒険も広大な世界を全身で楽しもうと思ってる!

428 名無しさん 2016/12/30(金)23:41:19 UYD
前にレスしたロバに憧れてるものです。
タンジェってなんか治安悪いイメージだけど大丈夫かな…。
ラテちゃんの病気も心配です。
日本でも野良さんの多くは猫エイズに感染していると言われているらしく悪い病気と聞いて嫌な予感が…。
どうか不治の病ではありませんように…!
わたしがモロッコを旅した時は、フランス語は話せたからというのもあるかもしれないですが、行き当たりばったりでいろんな人に良くしてもらいました。
メクネスがのんびりしてていい街だなぁと思った気がします。
旅の無事をお祈りしてます。

429 名無しさん 2016/12/31(土)20:54:09 smu
こんばんわ。
いつも自分が冒険してるような気分になりながら拝見しています。
ラテちゃんの無事を祈っています。

もうすぐ年越しですが、モロッコの年越しはどのような感じなのでしょうか。
宗教的にあまり新年は重要ではないと言うようなことを耳にしたことはあるのですが、よかったら現地の様子を紹介していただけると嬉しいです。

432 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/05(木)13:23:44 XrG
>>428
タンジェは…まさかあんなに魔境だとは思わなかったなぁ…
フェズが可愛く見えるレベルだw

フランス語が話せるとモロッコは大体大丈夫だよな
ちなみにおれの前のレスがちょうどメクネス辺りの話だ
ありがとう、これからも安全意識高く旅できるよう頑張る!

>>429
(やばい、実はもう帰国してて日本で年越ししたとか言いづらい…w)

Facebookでモロッコ人の友達は何百人もいるけど、あんまり新年祝ってる感じではなかったから>>429さんの言う通り普段通りの生活なんだと思う
その代わりラマダンとか羊の犠牲祭は現地で体験したけど国全体が盛り上がってる感じだった!

427 Parama000 2016/12/30(金)06:37:01 ID:tw@Parama000
中東から北アフリカは日が差すと暑い風が吹くと寒いことも。
「手に取るなやはり野に置け蓮華草」
日本人旅行者には会いましたか。

432 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/05(木)13:23:44 XrG
>>427
この時点までで日本人観光客と出会ったのはアズロウだけかなぁ…
あんまり観光客向けの場所は通らなかったし、大型バスが通るような道も通ってないからほぼ完全にモロッコ人としか出会わなかったw

436 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/07(土)00:32:50 Csw
つづき
夕方、ラシッドというおじさんとジャマルという若者に引き留められたのでそこで野宿することにした
近くに湖と小川があったのでモカも大喜びだろう
そしてこの晩、抗生物質のおかげか、とうとうラテの膿か止まったようだ
傷口も塞がりつつある
かなりいい感じだ
プレッソはキキという名前の犬と仲良く遊んでいた

no title

キキがお姉さんでプレッソが弟って感じでほほえましい限りだ
タジンも頂き、ベルカーニを除けば久しぶりの素晴らしい野宿だった

次の日
この日はなんだか力が出なかった
このごろは栄養があるものは優先的にラテやプレッソにやっていたから、おれは少し栄養不足なのかもしれない
というわけでブドウ売りの少年からブドウを購入
昼、ご飯を分けてくれた少年の荷物運びを少しだけ手伝ってから出発
出発後は一切影のない平野がずっと続いていて、雲もなかったのでかなり体力を奪われてしまった

途中、無残にも地面に打ち捨てられ、体中を獣に食い破られた犬の死骸を見かける
まじか…
…おれのキャラバンメンバーがこんな風になることはないだろうけど、嫌なものを見てしまったなぁ
そんな風に感じたのを覚えている

no title

夜、暗くなる頃から天気が崩れ、雨が振りだす
かなり田舎であるにも関わらずブティックを見つけたのでそこで野宿しようかと考えていると、アブドゥルという男が明日はうちに泊まりなよと言ってきた
明日は無理だが今日なら是非、ということでモカやキャラバンを家に置かせてもらい、おれはモスク前で野宿することになった
モスク内で寝なかったのはラテがいたからだ

「ゲゴッ」
ラテと並んで寝ていると、聞き慣れない音がラテの方からした気がしたのでラテの方を見る
妙な咳をしたように聞こえたけど…

…それ以後、ラテは一切咳をしなかったので気のせいだと割り切ることにした

この日、ラテはなぜかいつもとは比べ物にならないほどおれに甘えてきた
ラテはおれに何度もキスしてきたので、おれもラテに二回ほどキスした

…何で今日はそんな甘えてくるんだよwww
これからも毎日おれと寝れるからwww
そんな焦ったように甘えてくれなくても大丈夫だwwwまぁ嬉しいんだけどwww
そんな風に考えてたのを覚えている

おれ「ラテ、おれ、お前が将来どうするべきか考えたんだ。
お前を日本に連れて行くのは狂犬病のせいで実質不可能だって調べて分かった。だからおれ、タンジェに着いてキャラバンが解散したらフェズ郊外のベルカーニ村でアパート借りて数か月暮らそうと思うんだ。
そうすればタンジェに到着した後もしばらくはお前と一緒にいられるし、おれが日本に帰った後もベルカーニ村なら野良猫がたくさんいるからお前も生活に困らないと思うんだ。
だから、これからしばらくはおれと毎日一緒に寝られるんだぜ!
安心してゆっくり寝ろよ、ラテ」

そして、就寝

441 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/09(月)20:19:14 mDr
つづき
次の日、午前中に通った村で肉を分けてもらったが、ラテは食べなかった

あれ…そういやこいつ昨日の夜もチーズを一かじりしかしてなかったんじゃ…
それにラテはあまり水を飲んでいないようだった

…猫は気まぐれに絶食したり水を飲まなくなったりするっていうし、それに違いない、アズロウで受けた怪我は治ってもう膿も完全に止まったんだし

昼間、休憩中にラテとモカのツーショットを撮った
モカとラテ、この組み合わせはいい感じだ
ほっこりする

no title

この写真は、今ではおれにとって大切な意味のある写真となっている

休憩が終わり、ラテを肩に乗せて荷車まで運んでやる
荷車から降りるときも乗り込むときも、おれとラテとの息はぴったりだ

ラテがゆったりとした動作でおれの肩から荷車に飛び移る
この時左肩に伝わってきたラテの確かな体重を、おれは未だに覚えている


昼休憩を終えてから30分後、ウィンナに被せていた太陽除けのブランケットがずれていたので修正するために荷車を停車した
余談だが、ベルカーニ村を出発して以来、荷車を停車してラテの名前を呼ぶといつもラテは移動できる範囲でおれの方に歩いてきた
ラテの体調管理もかねて荷車を停める度にラテと少しだけ遊んでやっていたので、それが嬉しかったんだろうか
なんだかウキウキしているのを悟られまいと慎重に歩いているような足取りだったため、それがあんまり可愛かったもんだから、荷車を停めるのがひどく楽しみだったのを覚えている

でもこの時、ラテはおれのところへ歩いては来なかった
なんどか呼んでみたが反応がない
寝ているんだろうか

446 名無しさん 2017/01/11(水)21:38:06 NIO
(ヤバイ)

447 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/11(水)22:41:03 DTi
>>446
(この辺書くのキツイ)

つづき
荷車に近寄りラテを探す

ラテは荷車の一番前辺り、すなわちモカやおれに一番近い位置で突っ伏していた


…言葉にできないような嫌な感覚がおれを支配する
なぜって、突っ伏すラテの姿勢が死んだ獣のそれに酷似していたからだ

まさか…
…いやいや、30分前まで問題なさそうだったし、大丈夫に違いない
…具合悪くて寝てるんだ


そう信じて、ラテを手元に引き寄せる


…ラテは…

…ラテは全く反応せず、目は中途半端に開いた状態で手足はだらんとしていた

おれ「ラテ!!!!!」

大声で叫ぶ
おれ「ラテ!ラテ!ラテ!!!!!」
叫び、ラテを前後に揺さぶる

…確かに死んだ獣特有の姿勢をしてはいたけど、ラテはまだ温かいし、柔らかい!
これらはおれの知っている死んだ獣の状態と異なっているんだからラテは生きているに違いない!

そう信じて、ラテを揺さぶりつつ太ももの付け根なんかを圧迫したけれど、

外観、柔らかさ、温度、どれをとっても生きている猫と大差ないにも関わらず、

おれは、ラテの体から、脈拍と呼ぶべきものを一切感じ取れなかった

449 ネコスキー 2017/01/14(土)10:45:19 zT8
(´;ω;`)…………………………

451 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/14(土)18:00:35 aGg
つづき
ラテは、死んでしまった

死因は不明
…恐らく病気だったんだろう
動物病院で医者に、「ラテはとても悪い状態で、いくつかの悪い病気を併発している可能性がある」と言われたときから覚悟をしていたつもりだったが、ダメだった

…もうキャラバン旅をやめてしまおうか
…ラテのいないキャラバンなんて考えられない
…これ以上動物たちに何かあったらと考えるととても進む気になれない
弱気になって、そんな風に考えた

でも、その時おれは平野にいたので、夕方といえどまだまだ日差しは強かった
このままでは他の動物たちがどんどん弱っていってしまう
おれはキャラバンの仲間たちを守る責任がある
せめてもっと気温の低い地域まで行かないと

平野から森へ、泣きながら歩いた
途中、ラテが死んだのは何かの間違いじゃないかと考えて何度も荷車を覗いてみたけど、荷車の中には時間の経過と共に冷たく、硬くなっていく猫の死骸しかなかった

その後、天気はがらりと変わり、砂を含んだ嵐がしばらく吹き荒れた
大粒の雨も降りだした

どうしようもないので荷車をいったんとめ、道路わきの大樹の下に避難する
しばらくすると嵐と雨は止んだけど、なにもする気が起きなかったのでそこでしばらく休んでいると、親切な若者が通りかかった

若者はラテの話を聞くと共感してくれて、ビール瓶を二本くれた
ぐいっと一気飲みで全て飲み干す
体質的にこの程度では酔えないけど、少し楽になった気がした

その後、若者はラテを埋葬するよう促してきた

本当はまだまだ諦めきれず、ラテを荷車に乗せたまま旅したかったけど、他の動物たちのことを一番に考えるべきだと思ったから自分の気持ちを無理やり切り替えてこのタイミングで埋葬することにした
ラテのことを引きずってはいけない、今は他にも守らなければならない命がたくさんあるんだ

ラテの墓には、ラテお気に入りのブランケットを半分と、卵の殻、そしてチーズの包装用の銀紙をいれた

ブランケットは、毎晩おれとラテでシェアしていたものだ
寝ている間にラテが引っ張ってブランケットがほとんどラテの方にいっちゃうことばっかりで、よく取り合いになったっけ
だから半分ラテにやる
あったかくしろよ

卵、そしてチーズはラテの大好物だったけど、こうしてみるとどちらも柔らかくて病人用の食事って感じだ
肉はどうしたんだよ、肉はwww
ラテの首輪は、形見としてとっておこうかと一瞬迷ったけど、ラテによく似合っていたのでそのままにすることにした
この首輪は、おれがラテを大好きだったっていう証なんだ

ラテ、ありがとう、ばいばい、ごめんな

no title

452 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/14(土)18:08:30 aGg
その後数日間、おれの日記には一日の移動距離しか記載されていない
日記を書く気にならなかったからだ
この数日間のことはあまり覚えていない

そして気がつくとおれは、ラテがいる場所から100kmほど離れた位置にある港町、ケニトラに到着していた

453 別スレ8 2017/01/14(土)18:47:17 TUF
思い出すのも辛いだろうに、最後まで書いてくれてありがとう。ネット越しだけど、ラテが生きた思い出は、自分の中にそしてたぶんこのスレを読んでる他の人達の中にも残ります。ラテは頑張って生きたのだと。
モカ、ブラック、カプチーノ、プレッソ、ウィンナ達との今後の旅がどうなるのか、最後まで読ませていただきます。
ラテ、さよなら。お疲れ様。

457 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/17(火)21:47:10 3EZ
>>453
ありがとう
ラテとの旅はここでおしまいだけど、これからもキャラバン旅はまだまだ続く

457 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/17(火)21:47:10 3EZ
つづき
さて、港町のケニトラはそこそこ大きな都市だ
夕方、暗くなりかけでかなりシビアなタイミングでケニトラの警官が600m(実際は2km)先の安全な場所まで案内するからついて来いと言ってきたのでついていくことにしたんだけど、これが間違いだった
600mを越えても全然着かないし、最後の100mなんて3回「あと100m」と言われ、しかも結局100mじゃなくて1kmだった
途中で、ライト照らしてくれるなら何キロでも行くから嘘つかず正確な距離言えよって言ったのにさらに嘘を重ねる彼はなんなんだろうか

途中、街中で「Goさんのファンだ」と主張する人二人に出会い、それぞれケーキやジュースを差し入れてもらえた
ファンを募集した覚えはないけれど、アズロウやフェズでの行いがFacebookで拡散されたせいでおれはかなり有名になっているようだ

警察に連れられたどり着いた場所はなんと繁華街のど真ん中

想像してほしい
渋谷のスクランブル交差点の隅っこにロバや動物たちと荷車があって、外国人が世話をしている様子を
そんな感じだった

…警察はこんな場所が安全に寝れる場所だとでも思ったんだろうか

結局警官はすぐに帰ってしまうし、ていうかそもそもこの場所は警察や警備員いなくて人だらけで盗みとか軽犯罪し放題だろう
一番許せなかったのは、30秒ほど目を離しただけで、さっきファンだという人からもらったジュースが誰かによって倒されたことだ
故意だろうが故意じゃなかろうが許すものか…

…まぁとにかく散々な場所だった
そして、荷車を動かせという頑固そうなじいさんも出てきて、朝起きたら乱暴に扱われた荷車が半壊している状況が容易に想像できたし、実際歩道は狭かったから荷車が邪魔だというじいさんの意見にも正直同意だったから、夜9時から警察は頼りにせず自力で寝る場所を探すことになった

これまではこんな時間に移動したことはなかったけど、今回は仕方がない
かなり危険だし最悪安全に寝られる場所が見つからない可能性もあるけど、ここに留まるよりはマシだ

おれ「モカ、オンパ!」(フランス語で『行こう』って意味だ。現地で使われている言葉の方が聞き取りやすいだろうと考えたので、基本的に動物たちにはフランス語で話しかけたり指示したりしている。出発の際には毎回言っている掛け声だ。)
モカは嫌々といった感じでゆっくり歩きだす
疲れているんだから当然の反応だ
さて、なんとか安全な場所を見つけないと…

459 Parama000 2017/01/18(水)07:19:13 ID:tw@Parama000
後進国あるあるだ。
昔から旅人に不評な国、支那・北インド・エジプト・モロッコ。
私は何とも思わなかったが。
寧ろ評判なタイ・ネパール・トルコが好かない。

460 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/19(木)22:16:39 2jA
>>459
そう、人それぞれ相性のいい国と悪い国があるんだよな…
おれはタンジェ以外のモロッコが大好きだ!

つづき
荷車には小さい反射板が一つ付いているだけなので街灯のない場所は歩けない

仕方なく、街灯のある通りを選択しつつ中心街から離れる方向に歩いていると、トラックがたくさん止まっている工場のような場所に行き当たった
その場所には工場の隣に家があり、番犬が複数いて、何人かの男性と女性が談笑していた

これはつまり、貧乏でもなく子供もいるだろうということを表しているから安全なパターンだと踏んで交渉開始
これだけ大きな都市内部で完全に一人の状態で野宿するというのは非常に危険だ
荷物がリュック一つくらいしかない場合は野宿するテクニックも色々あるが、今回はモカ達がいるのでその辺は使えない
もちろん都市の外に出るだけの時間もない…というか街灯がないからモカや荷車のトラブルのリスクと悪い人間に襲われるリスクの両方があるので論外だ

つまり、街灯が途切れそうなこの辺りでせめて誰かの家の庭や敷地内で寝られるようにしなければいけない
というわけで何とか仲良くなって、家の前で野宿させてもらえるようお願いしてみる

すると、家の主らしき人に、野宿することでこの地域のガードマンの仕事が増えるから迷惑だ、どこかに消えろと言われた
この辺りは不良の溜まり場になっていそうな雰囲気だったし、他にそこそこ裕福な人たちがいるような場所はなさそうだ
この家の人に断られたら正直どうしようもなくなる

ただ、もちろん消えろと言われた程度で挫けるおれじゃないw
やばくなればなるほどテンションが上がって感覚が研ぎ澄まされるおれの特殊能力発動だw
女性もたくさんいるようだし、彼女たちを味方につけられれば主の考えが変わるというパターンはモロッコでは十分にありうる!

ということで女性たちと仲良くなるように努め、粘っていると、

工場前なら寝ても良い?晩ごはんもやる?風呂も使って良い?家の中で寝なさい?明日も明後日もここで暮らせば良いじゃないか!

という感じで打ち解けられた
そしてなんと、番犬にやっているドッグフードを分けてもらうこともできた

no title

プレッソの栄養状態は常に心配していたし、ドッグフードが手に入ったのはとても有難い

その後、風呂とタジンで万全の状態になり、ふかふかのソファーで就寝!

461 別スレ8 2017/01/19(木)23:55:42 BkF
素晴らしい!見事な交渉能力(*゚∀゚*)これは
コミュ障気味の自分には難しいなw
治安の悪い場所での旅にどんなパターンの
危険が考えられるのか、とても勉強になります。
ご飯と心地よい寝床でパワー充填!

464 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/22(日)00:14:27 zz9
>>461
日本ではおれもコミュ障なんだよなぁwww
日本はコミュニケーション取るの難しいよ、その点海外はめっちゃ簡単なんだぜw

464 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/22(日)00:14:27 zz9
つづき
さて、次の日の早朝、おれは番犬たちのいる工場地を出発した
ケニトラは港町だから海まで行こうか迷ったけど、フェズでの経験から町は危険だと判断し、現地人にとって有名な海辺の観光地、ムレイ・ブセルハムに向かうことにした

この辺りの砂はもはや岩山にあったような乾いた砂や、森の栄養たっぷりの土とは異なり、砂浜にあるような砂ばかりだ
基本的にアスファルトの上を歩くから問題はなかったけど、風の影響で砂がアスファルトの上に薄く広がっていたため、モカは少しだけ歩きにくそうだった

そしてその夕方、道路から少し離れた人気のないところで野宿しようと移動していると、おもむろにモカが座り込んだ
もちろん荷車ごと倒れてしまったから鶏たちやウィンナ、プレッソは大騒ぎだ

慌てて荷車をモカから外し、水平にして動物たちの安全を確保した後、モカの方へ向き直る

おれ「モカ、どうしたんだ…?
もしかして慣れない道をたくさん歩いたせいで足を痛めたとか…?」

心配していると、モカがむくりと立ち上がり、先ほど座り込んだ理由をおれに教えてくれた

…あぁ、お前、そういうやつだったな…

no title

465 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/22(日)00:40:18 zz9
その後、モカを標識の棒に繋ぎ、昨夜もらったドッグフードを砕いてプレッソに与えたり自分の分の食事を自炊したりした後、就寝

その後ムレイ・ブスルハムに到着するまでの数日はそこまで大きな出来事もなかったので割愛する

no title

強いて挙げるなら「ウィンナを売って欲しい」という人々が何人かいたということだろうか
確かに、どこにでもいるロバや犬、鶏と異なり、観賞用の鳩は裕福な人しか買えない動物だから珍しいんだろう
ラテのことがあった後だったから、いつかウィンナを盗まれてしまうんじゃないかとかなり心配になったりしたけど、
きちんと注意していればそんなこと起こるわけないと自分を安心させることにした
うん、そんなこと、起こるわけない

…これは実際にあった出来事をありのまま書いてるだけなんだけど、何で綺麗にフラグ立てる感じになるんだろうなw

そして数日経ち、ようやくムレイ・ブセルハムに到着する日になった
午前中、森を歩いている際に「この辺りはガルブと呼ばれる治安最悪の地域で、ならず者たちによる誘拐なども起こるからかなり注意するように」と警官から指示を受けた
誘拐とかあるのかと最初は意味がわからなかったが、ムレイ・ブセルハムが予想以上に集客力のある観光地だということが分かったので納得した
ここでもおれのファンだという人達数人と出会い、ジュースやハンバーガー、アイスなんかを差し入れてもらえた
この頃は常に栄養不足気味だからマジでありがたい

no title

人が多すぎて危険だったのでモカやプレッソを砂浜に連れていくことはしなかったが、海で少し泳ぎ、綺麗な夕陽を眺め、波の音に揺られながら眠ったことで気持ちをリフレッシュすることができた

明日からは海から内陸へ戻り、山中にひっそりと存在する青と白の町、シェフシャウエン、フェズほどではないがそこそこの大都市、テトゥアンを経由してタンジェへ行くつもりだ
タンジェまで歩いてあと10日ほど、シェフシャウエンでの滞在を考えるとあと少しかかるかも知れないが大体そのぐらいで今回の冒険は一区切りだ

気を引き締めていこう!

466 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/23(月)00:21:38 tPj
次の日の朝、目を覚ますとムレイ・ブスルハムが霧に包まれていた

no title

この先の森はならず者が出るから危ないと聞いていたので、ちょっとやばいと思いつつ出発
マジで危ないなら森の手前の検問の警察が止めてくるだろう

町の入り口の検問を通過しようとすると、警官が声をかけてきた
警官「この先の森は今霧が出ていてかなり危ないから彼らと一緒に行ってくれ」
警察が指さす方を見るとラフな格好をした白人と黒人の男2人が軽く会釈をした
かなり背が高い
二人とも身長190cm前後だろう

no title

ボディガードやんけwww

…正直、おれは睡眠時ならともかく起きている時に誰かに直接守られるのは好きでない
自分の意識がある間くらい、あらゆる状況に対応できなければならない、強くあらねばならないと考えているからだ
…ただ、悔しいがおれは体格的にこの二人にはどちらにも勝てそうにないし、実際濃霧に包まれた森が危険なのは間違いないので二人に同行をお願いすることにした

no title

森を抜ける途中、話したところによると黒人の方はもともとこの土地の警察で、白人の方はカサブランカ県警から任務を帯びて一時的にこの町に転勤しているそうだ
話を聞いている限り左遷ではなさそうなのでこの白人警官はエリートコース真っ只中というところだろうか

10kmほど歩くと森を抜け、町に出たので警官たちにお礼を言って帰ってもらった

さて、ちなみにこの日は地味におれの誕生日だ
友達からラインとかは来ていたけど、現地ではもちろん何もないので軽く自分で祝うことにする
午前中運良くパン屋の前を通りかかったので小さいケーキを購入
なんだか今日はモカの歩くペースが速かったので短い時間でたくさん歩くことができた

今日の晩ごはんは産みたての卵を利用した卵かけご飯と、トマトと唐辛子で味付けした鰯の缶詰だ
デザートはケーキ
卵かけご飯を少し火にかければプレッソも食べられるんだけど、予想以上にプレッソががっついたせいでおれの分が少なくなってしまったw

それでもなんとかお腹を満たし、就寝

467 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/23(月)00:24:29 tPj
間違えた
×白人
○モロッコ人

470 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/27(金)00:05:33 Ibs
つづき
さて、次の日、昼休憩をした村ではたくさんのロバが野放しにされていた
村の男曰く、ロバが多すぎて余っているので、(実際は200DHとからしいが)なんならタダでもいいと言っていた

その村だけでなく、この辺りの地域は野放し状態のロバをたくさん見かけた

no title

モカを放してやるならこんな感じの、野放しのロバが自由に暮らしてる場所がいいなぁなんて思った

さて、事件は夕方に起こった

モカや動物たちと一緒に見通しのいい平野を歩いていた時だ

突然、後ろから急ブレーキの音が鳴り響き、「ガン!」という音が聞こえた
慌てて後ろを振り向く

おれ「…は?」

no title

474 1◆jHsnWuH7MU 2017/01/31(火)00:36:06 tui
つづき

少し前を見ると車が停車していた

そう、車が後ろから突っ込んできたらしい

車は停車しており、人が出てきたので当て逃げされる恐れはなさそうだった
女性も2人いたのでどうやら家族らしいということが分かった

急いで被害状況を確認する

荷車の支柱が4本中2本折れ、タイヤ部分のフレームも曲がり動かなくなっている
にわとり小屋半壊、プレッソの家も半壊
にわとり小屋の方はなんとか形を保っていたが、プレッソの家に関してはプレッソが外に出られるだけの隙間が出来てしまった

プレッソはまだ幼く、車にひかれたりロバに踏まれたりする危険がある為最優先で保護すべきだ

プレッソを抱きかかえ、加害者の人たちと話をする
その家族の人達は警察に言わずに示談をと促すが、断固として警察を呼ぶと言っていると、周りの人が通報してくれたようで警察が来た

500m離れた場所に警察署と鍛冶屋があったのと、この辺りの警官とはそこそこ仲が良かったのが幸いし、モカたちと荷車は警察車両によって速やかに鍛冶屋まで移動され、車をぶつけた家の主人はその場で修理費を鍛冶屋に支払った

さて、実は今日は羊の犠牲祭だ

モロッコ人は皆、自分が所有している羊を殺し、その肉を近隣の人々に振る舞う

当然、町は機能停止
鍛冶屋も休業

なので仕方なく今日でなく明日修理してもらうことにした

祭りの影響で夕食は羊肉づくしだ

プレッソをとりあえず鍛冶屋前に積んであるタイヤの中に入れ(狭くて暗くて怖いだろうからマジで心苦しかったけど首輪の無いプレッソは制御不能だったからおれが睡眠をとるにはこうするしかなかった)、今日は鍛冶屋の前で寝ることにした

元通りなんて期待していないけれど、(「何とか動くレベルの修理」というのがモロッコでの責任を取るという行為に当たるからぶつけられた時点で不運だったと思うしかない)少しでもマシな状態で荷車が復活することを祈るのみだ

477 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/01(水)23:16:29 Usj
つづき
次の日の朝

鍛冶屋によって修理が行われたが、8割くらい終わったところで数日間旅行に行くと言って出掛けてしまった
言い方はきついかもしれないが、修理代としてまとまった金もらってるのに責任感のかけらもないという、これがモロッコの鍛冶屋クオリティだwww

まぁでも、金属フレームに関しては全て修理済みだったので、あとは時間をかければおれでもなんとかできる
のこぎりや金づち、釘や予備の木材なんかは荷車に積んでいたからそれなりに修理できるという状況だった

結局、この日のうちにプレッソの家とにわとり小屋の修理が終わった
あと少しで修理は全て完了だ

そしてその夜、問題発生

モカの背中が腫れているのを発見した
軽く触るとかなり嫌がる
痛いようだ

no title

後ろから車がぶつかった際に強く負担がかかってしまったのだろう
モカのこの膨らみは膿が出てきそうな膨らみ方だったし、同じ症状で一足先に行ってしまったラテのことを思い出して頭が真っ暗になったりもした

…モカに無理はさせたくない

そして、この辺りの動物病院の情報を集めてみたが、どうやらシェフシャウエンまで行かないとロバを診られるような動物病院はなさそうだった
とりあえず応急処置としてモカの背中を綺麗にして消毒してから抗生物質が含まれているスプレーを塗布した

それから鍛冶屋の前に座り込み、真っ暗な中一人で真剣に今後の方針を考える

モカの病状に関して、気付くのが遅れた原因は、患部を触ると痛がる以外はいたって普通だったからだ
歩き方に異常はなく、激しい運動でありなおかつ背中を擦る可能性のある砂浴びも普段通りの頻度で行っている
食欲も普段通りで排便にも異常はなかった

さあ、どうするべきか…

478 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/01(水)23:18:09 Usj
考えた結果、モカの怪我に対する今後の方針は以下の4つに絞られた

①モカをこの近辺に放ち、他のロバを入手して冒険を続行する
少し前でも触れたけどこの辺りはロバがかなり飽和している状態だから、モカが苦しい労働を強いられる可能性は低いし、友達や嫁になってくれそうなロバもたくさんいるから、モカがロバとして自由で楽しい生活できる可能性がある
ただし、モカの看病をする人はいなくて、傷口から雑菌が入って悪化する可能性もあるからあまりにも無責任な方針だし、モカ以外のロバと冒険を続けるというのは正直想像できない

?モカをこの近辺に放ち、冒険を中止する
これならしばらくはおれがつきっきりで看病してやれるから①のデメリットはうち消すことが出来るし、この辺りは鶏たちにとってもいい環境だ
ウィンナを放してやるのはある程度どこでも大丈夫だろうし、プレッソはアパートでも借りてしばらく一緒に住もうと思っていたから問題ない

③荷車とモカの接続方法を変え、荷車の重さを半分ほどにして冒険を続ける
 荷車をモカの背中でなく首に接続する
 そもそもモロッコのロバは背中でなく首で荷物をひいているのが一般的だったらしいので、モカの負担という意味では軽くなるだろう
 そして、ここからは多雨地域に入っていくため予備の水を捨てて自炊を諦めれば荷車の重さを半分ほどに出来るという計算結果になったので、おれでも牽けるレベルで軽くなり、モカの負担は限りなく少なくなる
 ただし、それでもモカが苦しい思いをする可能性はあるし、モカがほんの少し苦しいと感じていた場合に気付く手段は正直ない
 この方法はモカに実際に牽かせてみるまでは可能かどうかも分からない

④モカをこの近辺に放ち、荷車を軽くして、おれがタンジェまでの残りの山道(250kmくらいだ)荷車を牽いて動物たちと歩く
 これは…おもしろいけど…ロバ旅のコンセプトが崩れてしまうから冒険の果てに確固たる何かが得られるか自信がない
 これなら①の方がいいかもしれない

この日、これら4つの方法を中心に考えてみたけど、答えを出すことは出来なかった

479 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/04(土)18:17:47 m7u
次の日
昼までになんとか修理が終わったので、とりあえず③が可能かどうか検証してみることにした

重そうな荷物をとりあえず地面に置き、荷車を半分ほどの重さにする
そして、荷車の接続部を改造し、モカの患部を一切刺激しないように首に接続して、試しにモカに牽かせてみる

とりあえず円を描くように50mほど歩いてもらったけど、モカは特に問題なさそうに荷車を牽いた
嫌がる様子はなく、歩き方も至って普通だ

でも、だからってこれで大丈夫とは言えなかった
おれが気付けないだけでモカは傷のせいでとても苦しい思いをしているのかもしれない
その場合は、モカをこれ以上おれの冒険に付き合わせるわけにはいかない

おれ「モカ、お前は今どんな風に感じてる…?」
尋ねたところで答えが返ってくるわけないのはわかっていたけど、祈るようにモカの方へ振り向いた




no title

あぁ、お前ってそういう奴だったわ…

おれ「…。
うん、大丈夫そうやな!」

結局、モカの勃起が決め手となり、患部を一切刺激しない形に荷車を改造した上での出発となった
ガスタンクや水など重たいものは全て捨てた
ここからは自炊無し、水も随時調達しなければならないハードモードだ

さらに、また車が衝突するとまずいので常に後ろを気にしながら歩く
後ろから来た車に対しては交通整備員のように手を大きく振って誘導する
かなり疲れる

昼間、やはり心配になってモカの方を見遣る

no title

大丈夫そうだw

おれ「さぁ、青と白の町シェフシャウエンへ!
モカ、オンパ!!」

483 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/07(火)09:19:30 YbL
次の日

朝、タイヤの部品が壊れているのを発見
ただし羊祭りの影響で鍛冶屋などはあと3-4日は閉まっているということと、荷車がよほど傾かない限りは変な音もせず普段通り歩けるということがあったので、シェフシャウエンまでこのまま行くことに決定

そして、モカの怪我や荷車の不具合などを注意深く見る必要があるのと日没の時間が早くなってきた関係で、今日からはあまり距離を気にせずのんびり歩こうと思ったので、昼間はプレッソと遊び倒した
プレッソは最近少しずつ活発になってきたので、おれの体のいたるところを舐めまわしていた
…もう少し大きくなったらしつけしようw

ちなみにウィンナは今日から鳥籠の外に出している
前々から鳥かごの中は窮屈そうでかわいそうだと感じていたからだ
荷車が糞で少し汚れてしまうけど、人間視点での見栄えよりもウィンナの過ごしやすさを優先だ
荷車の上にウィンナが乗ると全体的にかなりかっこいい感じになった

no title

その夜もまた、おれはプレッソと遊んでやった
プレッソはおれの顔中を舐め、甘えてきた

うん、プレッソもすくすく成長してるみたいで良かった

なんて考えながらプレッソを荷車へ戻し、就寝して次の日

朝、起きてすぐ異変に気付く

なんてことだ…


熱が出たらしいw

485 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/10(金)11:05:00 reX
つづき
熱があるらしい
体温計
38℃
昨日の夜プレッソに顔を舐められた時にばい菌が入ったのだろう
幸いガソリンスタンドが近くにあったので、今日進むのは諦め、ガソリンスタンドの店員さんたちに事情を話して従業員用の休憩室で休むことになった

外はまだまだ暑かったけど、室内ならそこまで暑くないので明日までには熱が下がって出発できるだろう
そしてそのままおれは気を失うように眠りに就いた


目が覚める
熱は下がっていそうだが体力を使い切っていたので体がだるい
周りを確認すると、おれの隣でおっさんが横になっていたので驚いて声をかける

おれ「やぁ…おかげさまでかなり良くなったみたいです。
あなたも休憩中ですか?
今の時間は…夕方6時か…。
おれももう少しここで休ませてもらってもいいですか?」

おっさん「あぁ、おれは今日の仕事は終わったから今からここで寝るのさ。
好きなだけゆっくりしていくといい。」

おれ「ありがとうございます。」

…というわけで許可を得られたので心置きなくもうひと眠り



その少しあと、ぼんやりとした意識の中、誰かに体を触られているような気がする

…まぁ、今は疲れてるから夢や金縛りの類だろう
そこそこ頻繁に金縛りに遭う俺はそう結論付け、もうひと眠り

次に起きたとき、異変に気付く

おれ(…!)

おれ(ズボン脱がされてるやん…!
めっちゃ下半身触られてるやん、隣のおっさんに!!)

486 名無しさん 2017/02/11(土)20:39:25 Eao
アッー♂

490 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/14(火)00:48:19 YOT
>>486
www

489 名無しさん 2017/02/13(月)01:59:40 yKT
助けてモカ!出番だよ!

490 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/14(火)00:48:19 YOT
>>489
ピンチの時モカは全く役に立たないんだよなぁ…


つづき
ちなみにはしょったけどホ○に出会ったのはモロッコでは二回目だ
湖のある村イミルシルに到着する前、遊牧民の人たちとお茶を楽しんでいる時にガチな感じで尻を揉んでくるおっさんがいて切れたことがあったんだけど、今回はさらに積極的なおっさんに出会ってしまったらしい

とにかくこの状況はまずい
すぐに逃げないと…

おれ「おっさん、やめろ…」
おっさん「大丈夫大丈夫、そのまま寝ててくれれば」

…だめだこのおっさん

おれ「それならおれ外で寝るから、おっさんはいつも通りここで一人で寝てくれ
世話になった」
おっさん「いやいやいや、ここで寝てていいから、おれ触らないって約束するから!」
おれ「いや、大丈夫、ちょうど夜風に当たりながら寝たいと思ってたところだし」
おっさん「いやいやいや…」


その後、おっさんは最後までおれを自分のそばで寝かせようと必死だったが、なんとか振り切り、おれは外に出て荷車のそばで仮眠をとることにした
ここなら深夜でもガソリンスタンドの店員や客の目が届くためホ○の危険はないだろう

…というわけで軽く眠って次の日、熱も下がったのでおれはモカ達と再出発することにした

496 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/18(土)10:29:28 VCD
つづき
さて、次の日は久々の山道だった

シェフシャウエンは山奥にある町なので当然と言えば当然なんだけど、乾燥地帯のトドラ渓谷を出発してから、山、森、都会、海、そして山と、かなりたくさん歩いて、かなり遠くへ来たようだ
この時点で歩いた距離は約900km
ゴールのタンジェまではあと100kmほどだ

そして、このペースでいけば明日には次の目的地であるシェフシャウエンに到着するだろう

この日の夕方、モカの背中の腫れているところから少し膿が出た

…これは、ラテが猿に噛まれた時と全く同じ症状だった
暗い気持ちになるのを抑えつつ、傷口を綺麗にして消毒し、抗生物質のスプレーを塗布する
…大丈夫だ、体の大きさと比べて腫れている部分はかなり小さいのでモカに関しては自然治癒する可能背が非常に高い

明日、シェフシャウエンで動物病院に連れて行こう

そう決意してその夜、久しぶりに雨が降ったので荷車の中で寝ることにした

そして次の日
青と白の町、シェフシャウエンに到着!!

シェフシャウエンは道が狭くて坂道が非常に多い町で、人や車でごった返していたけど、今のおれとモカならなんなくスムーズに移動することが出来た

no title

途中、卸売市場の前にある広場を見つけたので、シェフシャウエンにいる間はこの広場を拠点にしようと考え、荷車を停車した

広場ではたくさんの子供たちが遊んでいたので、これまで通りウィンナが注目されるかと思ったが、今回子供達の人気者になったのはプレッソだった
プレッソも今では軽く走るくらいのことは出来るようになっていたので、子供たちと楽しそうに遊んでいた

no title

そして、その広場で出会った心優しいスフィヤンという少年に案内してもらい、晩御飯はレストランでカルボナーラを食べた
出発して以来初贅沢かもしれない
スフィヤンは子供たちの輪から少しだけ外れているようには見えたけど、とても優しく、気が利く少年だ

no title

その後、シェフシャウエンの動物病院に行ってみたけれど今日は休業しているようだったので明日もう一度行くことにした
ちなみにこの日モカは背中の腫れが少し引いていて膿も出ていなかったので、順調に回復しているとみるべきだろう

そして夜、スフィヤンにいろいろと助けてもらいながら寝床を確保
寝床は青々とした袋小路だった

no title

まさにシェフシャウエンって感じがする
モカは市場前の広場に繋いでおくことにした
ちなみに袋小路からは広場が見えるので、いつでもモカの状態を確認することが出来て安心だ

この町には警察が少なく、交通整理をしていた警官を除いて警察に声をかけられることがなかった(=噂通りかなり治安がいい)
この感じだと明日は病院に行ったあとゆっくり観光ができそうだ

498 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/19(日)20:49:54 3Hi
つづき
次の日の朝、まずモカを連れて動物病院に行く
獣医曰く、モカに対しておれがやっていた処置は完璧な上にもうほぼ治っている状態なのでこの調子で抗生物質スプレーを続ければいいとのことだ

その後、観光
まぁ、綺麗な青の町並みだった
シェフシャウエンはめちゃくちゃ有名だから観光に関しては検索すればいくらでも情報や画像が出てくるし、ここで書く必要ないか…

夜、寝る前にスマホをいじっていると、驚くほど小さな子猫が来て絨毯の上に居座り始めた

no title

ガリガリに痩せていて、食欲もないようだった
ミルクを出してやったが飲まなかった
ラテと同じく病気なんだろうか
まぁ、いいよ、今夜はおれの絨毯の上でゆっくりしていきなよ

そして、就寝

501 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/22(水)00:30:01 3lQ
つづき
次の日、シェフシャウエンを出発
海にむかっているはずなのに、なぜかこの日は登り坂ばかりだった
途中の湖が綺麗だった

no title

その日は特に何事もなく、夜、ガソリンスタンドで野宿することにした

多くの人が歓迎してくれたが、一人のおっさんが発狂して通報
警官もガソリンスタンドで寝ていいと言っていたが、おっさんがなおも発狂したためすぐ近くの警察署内で寝ることに

まぁ、個人的にはガソリンスタンドで野宿するの好きなんだけど、警察署なら動物達にイタズラされるリスクがゼロな上に、モカが好みそうな草も食べ放題だったので結果オーライだ!

そして次の日
午前中、日本人観光客がたくさんのっている観光バスとすれ違う
皆笑顔で手を振ったりスマホで動画を撮ったりしていた
なんだか恥ずかしい

この道はゴールのタンジェに続いている道で、スペインから膿を渡ってタンジェに来た観光客たちのバスがシェフシャウエンに行くために通る道でもあるから大型の観光バスがたくさん通るようだ

no title

写真はウィンナとのツーショット
この頃になると比較的新入りのウィンナもおれにかなり慣れてきてくれていておれにとって大切な相棒の一人になりつつあった

あそして夕方、目的地の村に着くも、警察と住人の両方からこの村のなかでは寝るな、出ていけと言われてしまう
結局、町を出てすぐのところにある家の前で野宿させてもらうことになった
なんでも父親がドイツに住んでいるらしく、クスクスとジャーマンティーをご馳走してくれた
家の前の雑木林にはモカの食べる草も十分にある

…この辺りはよそ者を毛嫌いする風潮が強いみたいだけどとりあえずは今日も結果オーライだ!

最近風景写真貼ってない気がするから貼ってみる

no title

no title

no title

505 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/26(日)22:49:05 rDH
つづき
さて、もう目と鼻の先にコーヒーキャラバンのゴール地点であるタンジェがあるんだけど、実はおれはタンジェへ行く前に少し寄り道をしなければいけなかった

理由は滞在許可証の有効期限
基本的に正社員などで就職していない外国人は3ヶ月までしか滞在できず、おれの滞在許可証はあと10日ほどで切れてしまうため、モロッコを出国する必要がある
ただ、だからと言ってあと10日でキャラバンと強制的に別れないといけないというわけではなく、一旦国外に出てすぐ戻ってくる(=再入国)すれば3ヶ月の滞在許可証が更新され、キャラバンの皆と旅を続けることができる

…というわけでおれはタンジェの手前の都市テトゥアンから陸続きのスペイン領セウタへ入国し、即日再入国することに決めた
その為にはおれがスペイン領に行っている間、キャラバンのメンバーたちはもちろん荷車の荷物を盗まれないようにする工夫が必要だ
ある程度運も絡んでくるけど何とか被害を最小に抑えて乗り切らなければ…


…さて、昼過ぎにテトゥアンに到着
前述の通り今日はテトゥアンのどこか安全な場所にキャラバンを置いてバスかタクシーでスペイン領セウタまで行って帰って来ないといけない
誰か協力してくれそうな人はいないかと考えていると、大通り沿いの観光ツアー代理店から青年が出てきておれに走り寄り話しかけてきた
なんでも彼含めこの代理店の従業員一同はFacebookでおれのことを知ったらしく、是非一緒に写真が撮りたいとのことだった
なるほど、店舗を構えている職場の人々なら比較的信頼できるし、数時間の間ガレージぐらいどこか手配してくれるんじゃないかと期待を込めて、
実は困っているんだ…と代理店の青年に相談すると、隣のだだっ広い土地(大きな扉があって鍵をかけることができる)を所有しているアブドゥル・マジッドさんというご老人を紹介してくれた
アブドゥルさんは最初は明らかにめんどくさそうだったが、青年の説得のかいあって安全な場所を提供してくれた
夕方には戻るから、と言い残してグランタクシー(かなり安く移動することができる乗り合いタクシーだ)に乗りセウタに向かう

そして到着、スペイン、セウタ

no title

せっかくなのでほんの少しだけ観光をしようか迷ったけど、セウタではバスを使わないと商店などがある町まで行けそうになかったしユーロも持っていなかったのですぐにモロッコに戻ることにした

そして、無事モロッコの入国スタンプを押してもらいテトゥアンへ

テトゥアンに帰ってみると、動物たちはみんな無事で元気だった
アブドゥルさんは犬や猫、にわとりを空き地に放していて気まぐれに餌をやって暮らしているらしく、キャラバンのみんなに上質なご飯をごちそうしてくれていた
モロッコ人としてはかなり動物が好きな人のようで、ありがたい

そしてその夜は結局アブドゥルさんの土地で野宿させてもらえることになった

508 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/27(月)23:33:05 VOE
つづき
今日は風の強い日だった
というか風力発電の設備もたくさん見かけたし、この辺りは地形的に常に強い風が吹いていそうな気がする

タンジェまであと二十数キロ…というところで、モカと接続する為の荷車の棒の片方に亀裂が入り、今にも割れそうな状態になっているのを発見

no title

あと少しではあったけど、おれやキャラバンメンバーとここまで旅してきた荷車はもう限界が近づいているようだった

no title

この辺りの道は交通量が今回の冒険において最高に多く、こんな危険区間で棒が割れてしまうと詰む気がしたので即座モカを止まらせ、添え木で修理
でもこんなのは一時的な措置だ
運が良ければ4km先にある村で修理することができるはずだ

…しかし実際に歩いてみると、添え木は不十分だったようで、少しずつ、本当に少しずつ棒が曲がってきてしまう
このまま歩かせると4kmすらもたないと思ったので手綱を離して折れかけていない方の棒を持ち、モカの補助をしながら歩くことにした
要するにおれが荷車の「重さ」を担当し、モカが牽引を担当するという図式だ
手綱を持っていない以上、モカをこれまでのように道沿いに数センチ単位でコントロールするのはかなり難しくなる
モカが立ち止まったり変な方向に歩き出したらアウトだ

でも、もちろんそんなことにはならなかった

モカは自分の役割をきちんと理解しているようで、普段と変わらず道路の右端ギリギリを歩き続けてくれた
できる限り荷車の棒への衝撃が少なくなるよう、モカと足並みを揃えて歩く
そんなことは今までやったことはなかったけど、息を合わせるのは簡単だった

息を合わせてみて分かったけど、仮に二人三脚のように足を結ばれていたとしてもなんの問題もなく歩き続けられただろう

このとき既に、モカと歩いた距離は1000kmを越えていて、いまやおれとモカの間には確かな信頼関係があった

そうして二人三脚をすること1時間、たどり着いたらガソリンスタンドの外れで野宿することにした
日も沈んでしまっていたので鍛冶屋はやっていないだろうし、ビザの更新もしたから時間に余裕がある
明日の朝、荷車を鍛冶屋に持って行って金属部分を溶接してもらおう

あと20kmほどでタンジェだけど、最後だからこそ堅実に行こうと思う
写真はガソリンスタンドでのびのびするプレッソ

no title

510 1◆jHsnWuH7MU 2017/02/28(火)13:23:04 V9G
つづき
次の日、ガソリンスタンドの近くの村の鍛冶屋で荷車を修理(簡単な溶接だけだから修理費用約200円)して再出発!

そして道中、何キロにも渡るだだっ広い峠で野生のロバを3頭見かける
この辺りはロバの供給過多でロバの価値が非常に近いというのは知っていたが、確認する為にたまたま近くにいたおっさんに詳しく話を聞いてみる

おれ「おっさん、あのロバたちは何で自由なんだ?」
おっさん「なんでって、ロバをわざわざ飼おうとするやつなんてこの辺りにはあまりいないからな
ここはタンジェっていうでかい町の外れだからロバはもう時代遅れなのさ」

この辺りは多雨地域で、野生のロバがたくさんいるからモカの就職先としては有力候補だ

no title

もちろん、ゴールした後動物たちをどうするかについてはほとんど考えがまとまっていたんだけど、実はモカだけはまだ決めかねていた
野生に帰すか、人に飼ってもらうか…

野生に帰した場合、ロバが飽和していて誰かがモカを自分のものにしてしまう可能性の低い地域、雨が十分に降って様々な植物が生えている地域、友達や嫁になってくれそうな野生のロバがいる地域、などの条件を満たしていなければ、モカは苦しく、寂しい生活を強いられてしまうだろう
そして人に飼ってもらった場合、大切に世話してもらえる可能性があるけど、走るのが好きなモカにとっては狭い行動範囲というのは不幸なのかもしれない

そんなわけでここ数週間は情報収集に努めていたんだけど、野生のロバたちがいるこの峠以外にもタンジェの外れにはロバの多い村があるとの情報を得たので
この日はゴール(交易で栄えたモロッコにおける「行商キャラバン」だから海沿いのタンジェ港がゴールだ)まで行かずに手前のその村で野宿する予定だった

さて夕方、タンジェ内にある、ロバがたくさんいるはずの村に到着
飼われているロバはいるにはいるがそこまでいない

やはり今日通った峠が有力候補か…

とにかく村のモスク前に荷車を停め、村人たちに挨拶をしてそれなりに仲良くなっておいて、野宿の準備をしてから荷車の後ろ側でプレッソと遊ぶこと数十分

プレッソが少し眠そうになってきたので、鶏たちやウィンナに餌をやろうと思い荷車の前に移動して、おれは言葉を失った

no title

512 別スレ8 2017/03/02(木)08:51:20 dzA
ウィンナ…!(´;ω;`)
モカとの信頼関係やプレッソの成長が喜ばしい
一方で…。どんな結末になるのでしょうか。

513 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/03(金)23:57:52 QLA
>>512
ウィンナはもともとモロッコ人からプレゼントされた仲間ってこともあって、モロッコ人の間で人気の高い動物だったから、もっと用心しておくべきだったな…

つづき
ウィンナが、いない、盗まれた…

ショックはあまりにも大きかったけど、だからこそ、こんな時こそ頑張りどころだ、と冷静に状況を分析することにした

その結果、ウィンナを取り戻せる可能性を8割弱と見積もることが出来たので少しほっとする

まず、このあたりは人通りもあるため、状況的に単独犯はあり得ないのでこれはグループによる犯行だ

次に、鳥かごの扉に鍵がかかっていなかったにも関わらず半分壊して盗んでいた手際の悪さから犯人は若い男(モロッコの若い女性は皆保守的でおとなしい。この辺りでは外国人を目の敵にしているような老婆は見かけていない)である可能性は非常に高い
そもそも扉の開きかたから考えて子どもの手でもない限りウィンナを外に出す空間はなかったため、実行犯は少年だろう
扉を全開に開けておれの手でぎりぎりの大きさなんだ、ウィンナは…

そして犯人像が正しければ、扉の壊しかた(余裕のなさ)やウィンナを盗んだ目的(まず売り払って金にするのが狙いだろう)から考えても反応を伺うためにおれの目の届く範囲に少なくとも一人は犯人を知る者がいるに違いない


つまり犯人像としては若者数人で、実行犯は少年、今もどこかからおれの様子をうかがっている、という可能性が高い

おれのこの読みが当たっていれば、経験上こういうときは大人の男たちを巻き込めば数分から数十分でウィンナを取り返すことが出来るはずだ
村のメンツを保つため犯人は最後まで分からないだろうが、ウィンナが戻ってくる可能性、勝算は十分だ

考えがまとまったところで速やかに実行
大声で周りの大人を巻き込んで騒ぎ立て、ついでに犯人に対して、おれの大事な鳩を返してくれるなら、金が欲しいならくれてやる!と呼びかける
…まぁ現金はあんまり持っていないし、村のメンツを守るために犯人特定がなあなあになるのを見越しての呼びかけだからあんまり払う気はないが、犯人たちがこの呼びかけに応じるか、または大人たちの情報網によって犯人が特定できるかすればウィンナはとりあえず戻ってくるだろう


そして、その20分後

no title

516 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/06(月)00:14:50 2ad
つづき
ウィンナ奪還

まずはけがの確認
ウィンナの片足が動かない
よく見るとビニールヒモがきつく結ばれていた
取り除く
泥棒が本気で許せない

血が止まっていたようでその後足から出血
即抗生物質スプレーで止血

留まるのも移動するのも危ない
村の大人たちが夜中営業している小売店の隣を紹介してくれたが、もちろん信用はすべきでない
ただこの時間に闇雲に移動するよりはマシだ
明日タンジェの中心街を経由してゴールするため体力は温存したかったけど、今夜は寝ないことにする

ウィンナはストレスによる過呼吸が止まらない
小さな動物はこういったストレスが命の危険に直結するから油断は許されない

鳥籠を毛布で包み、暗く暖かくして静かな場所に移動して待つこと3時間
ウィンナの「ズ… ズ…」といういびきが聞こえてきた
とりあえず落ち着いたようだが、呼吸の際のお腹の動きがぎこちないので、強く握られたせいで肋骨が折れている可能性はある

次の日は港でなくまずは動物病院に行くべきだ

野宿する場所の隣にある小売店は村の若者たちがやっていて、その若者たちが朝までボディガードを買って出てくれたが、彼らとのやり取りで、おれは一つの確信を得た


…いやぁ、有り難い限りだ

ほんとに、絶対に安全だ



…泥棒たちに守ってもらえるなんて…

519 名無しさん 2017/03/06(月)09:36:34 hla
ドンドンドロンボー

520 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/07(火)23:05:48 2x1
>>519
フェズやタンジェは盗人の温床だw
まぁ泥棒に関しては特に海外では育った環境によっては仕方ない部分もあるとおれは思ってるけど、モノならまだしも仲間を盗むやつを許すわけにはいかないな

つづき
その後、寝ないことに決めたのでずっと起きていたんだがけど、とにかく小売店の若者とその友達がうるさすぎた
普段は朝まで営業はしないみたいなので安全代として10DHくらいあげてくれと村長が言っていたんだけど、そもそもまず間違いなく泥棒だというのと、うるさいことによるウィンナのストレスを考えても10DHあげるべきか迷うレベルだ
ウィンナのストレスは命に関わるからと何度言ってもうるさいのをやめないからしまいにはおれの方から距離を置いて…あぁ、当時のイライラを思い出して筆が進まなくなったからこの件はこのくらいにしておこう

そして朝4時。
夜明けまであと3時間というところで若者たちは本性を現した
ウィンナを助けてやったんだから1000DHよこせと言ってきた

ウィンナをこんなにされて、10DHでも迷うレベルなのにあげる気にならない
そもそもここであげてしまうと更に請求され、粘着されることが目に見えているからよほど切羽詰まらない限り彼らに金を渡すべきでない

ならもう警備はいいからおれは行くと告げ出発

若者たちは諦めず、金をよこせ、金をよこせとついてくる
この土地を熟知しているだけあって、先回りしていろんなところから出てくる
何度も石を投げられて、その内のいくつかは荷車に命中した

相手は3人

寝てなくてかなり疲れているし、ここから先は治安的にはさっきの村よりもっと危険(ただしだからと言って反対方向へ進むと田舎道になってしまい危険が増すため、今は繁華街に向かうしかない)だしで、
この先のことを考えるとマジで憂鬱だけど、コーヒーキャラバンのみんなの為にも今は気を抜かず頑張るしかない

面倒なことにならないよう(もうなってるけどw)、暗い通りは避け、街灯がぎりぎりあるような細くて明るい道を選んでモカ達とタンジェ中心街へ向かって歩く

もう少し街中まで行き、大通りまで出ればおれの勝ちだ

直接殴って強引に金を盗りに来ないのは家と職場が割れているからだろう
モロッコ警察はおれが知る限りではアフリカで最もまじめだから、若者たちはおれに危害を加えたらただでは済まないことを分かっているんだろう

なら焦らして時間稼ぎをしつつ、牽制もするべきだ
ということで人に助けを求めるふりをして家のドアを叩いたり、立ち止まって冷静に話し合ったり、相手のリズムを乱すことに専念する

ネタが尽きてきたところで本来払うつもりだった10DHを渡す
これで3人のうちの1人は満足したようだった
残りの2人は1000DHよこせとまだまだついてくる

521 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/07(火)23:06:44 2x1
さらに中心街に向かって歩いていると、しばらく2人の姿が見えなくなり、代わりに正面から帽子を被った青年が歩いてきて、大通りまでボディガードをするから金よこせと絡んできた

考えるまでもなくグルじゃねーかwww

青年「外国人、この辺りはマジで危ないぜ?しかも武器もないんだろう?
不用心な奴だなまったく」
青年は腰から刃渡り40cmのマチェット(超でかい包丁って感じ、詳しくはググってくれ)をするりと出し、おれに見せてきた
見せびらかしてきたのはおれに金を出させるための威嚇のつもりなんだろう

おれ「この辺はほんとに危ないみたいだね。ただおれは不用心ではないけどなw」
おれはそう言い、いつでもすぐ取り出せるようにしてあった刃渡り30cmのマチェットを手に取り青年に見せる
ちなみにおれの最たる武器は左ミドルと膝蹴りだから刃物は威嚇用でしかないけど、一応ナイフ術を含むフィリピンの杖術をかじっていた時期があるから素人よりは刃物がうまく扱えるはずだ

おれのマチェットを見た途端、青年の顔が引きつる
おれが武器を持っていないと考えていたようで、反応からやはりマチェットを見せびらかしてきたのはおれを脅す意味合いが強かったんだろう

よし、これで対等なところまでもってこれた

そして途中、追いかけてきた若者たち2人が立ちはだかるも、帽子を被った青年が追い払ってくれた
結局、さんざん引っ張って大通りに到着したあとで5DHだけ支払う
…追い払ったっていってもほぼ確実にグルだしなぁ
どうせあとでみんなで山分けするんだろって感じだ

まぁグルじゃなくても実際にこういうことしてくれる人はモロッコでは割といるし、その場合はもっと払っても良かったんだけど、お金がほとんど払えないことは最初から言っていたし、今回はタイミングが悪かったと諦めてもらおう

その後ようやく大通りに出たものの、ウィンナ誘拐事件による疲れと不眠によって体は限界だった
でもウィンナの為に少しでも早く病院に行かないと

ガソリンスタンドで寝かせてもらえないか訪ねてみるも、交渉の余地なく即断られる
ぼやけた頭で後ろから来るたくさんの車をやり過ごし、なんとか警察署に到着
最初は断られたが、警察署の隣の芝生のスペースならいいとのことなので、動物たちに食料を与えてから周りを警戒しつつ2時間だけ仮眠をとることにした

524 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/10(金)23:40:09 z2i
つづき
2時間後、起きてすぐ動物病院に向かう
ウィンナはもう普段とほぼ変わらない様子だ

それでも念のため獣医さんに診てもらったが、獣医さん的にも栄養を十分に取らせていればもう大丈夫らしい
ついでにモカも診てもらったけど、傷はほぼ完治していて問題ないらしい

さて、動物病院を後にし、最終ゴール、海を目指す

朝とはいえタンジェの街中はごった返していて、たくさんの人々や車が所狭しと細い道を行きかい、しかも一方通行の道が非常に多かったためモカたちと移動するのはめちゃくちゃ骨が折れた
治安においても道路事情においても、タンジェは今回の冒険において間違いなく最も難易度の高い町だった

寝不足で疲労困憊の中、モカや動物たちをうまく誘導し、安全に配慮して人々に声をかけながら一歩一歩、海への下り坂を下っていく


そして…!

525 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/10(金)23:46:15 z2i
no title

…トドラ渓谷からタンジェまで、総計1059kmに及ぶおれとモカ、そして動物たちの旅はとうとうゴールを迎えた!

…あぁ、とうとうたどり着いた!

「行商人」、そして「キャラバン」に憧れて、鉄鍛冶屋や宿の主人と協力して作り上げたほぼ手作りの荷車と、トドラ渓谷で出会った耳が欠けている攻撃的なロバ、モカと一緒に歩き始めた暑い夏の日

そして道中ラテ、ブラック、カプチーノ、プレッソ、ウィンナを仲間に加え、冒険譚や写真撮影、卵なんかで生計を立て(ちなみに行商は最終的にモロッコでの滞在費全額+20,000円くらい稼げたw十分すぎる成果だ)、ようやくここまでやって来れた

安全な旅ではなかった
退屈な旅でもなかった

全員無事に最後までたどり着けたわけじゃない
コーヒーキャラバンの仲間たちは途中、怪我したり、死にかけたり、病気になったり、盗まれたりした

そして、ラテ

でも、だからこそ、このゴールには意味があり、おれの心にはたくさんのことが深く刻まれた

音のない広大な岩山
乾ききった風の吹く荒地
人里離れた山道で出会った遊牧民の人々
どこまでも広がる平野と照り付ける太陽
贅沢品、「冷たい水」
大樹と猿で彩られた小さな森
路上駐車してある車に荷車をぶつけないように集中し続けた都会の大通り
温かい人々が暮らすフェズの外れの小さな村
シャワーを浴びる機会が少なすぎてもはや風呂としか思えなかった海
心優しい少年が暮らす青と白の小さな町
近代的な港町

これらはすべて、動物たちとの思い出と一緒に昨日のことのように思い出せる

モカのペースに合わせ、時速3km
たくさんの人々に助けられ、一歩一歩踏みしめながら動物たちと歩いてきたこの感動を、苦難を、喜びを、おれはずっと忘れずに、これからの人生の糧にしこう

…そんな風に強く思うことが出来た、最高の冒険だった

526 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/10(金)23:53:46 z2i
no title

no title

no title

no title

no title

no title

no title

no title

no title

no title

no title

527 別スレ8 2017/03/11(土)04:31:50 Ad5
お疲れ様でしたヽ(;▽;)ノ
点在する人々の暮らしを荒涼とした大地が繋ぐ
旅路。果てに見た景色は黄金色に輝いて、とても
魅力的なゴールに見えます。
モカ、ブラック、カプチーノ、プレッソ、ウィンナ
そしてラテ。スレ主さんとコーヒーキャラバンの
旅路&商売、達成おめでとう! そして、長い間
楽しい旅の話をありがとう??

532 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/12(日)21:33:34 e2K
>>527
ありがとう!
この冒険のおかげでまた一歩、おれが目指す境地に近づけた気がするよ!

529 名無しさん 2017/03/11(土)08:29:48 uTZ
動物たちをどうしたかを書いてくれよ

532 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/12(日)21:33:34 e2K
>>529
もちろん!
ゴール後に彼らをどうするかってのは一番悩んだ部分だからおれとしても共有したいんだぜ!

532 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/12(日)21:33:34 e2K
後日談、というかつづき

その後、おれは別の警察署の隣の公園で野宿することにした
ついにタンジェの北端まで到達できたので、今日はみんなを労うべくスーパーでそれぞれの好物を買ってみた

モカはメロン、プレッソは肉、にわとりたちは卵、ウィンナは卵黄だ

ウィンナは他のメンバーよりタフでないからこれまで普通の餌とパン以外は与えてなくて好物が分からなかったけど、卵黄なら栄養の塊かつ味もあるので美味しく食べられるんじゃないだろうか

みんな、ほんとによく生きてタンジェまで来てくれた…
ありがとう、ありがとうと全員に声をかけてまわる

その様子に周りにいた人々も祝福してくれた

…さぁ、タンジェを出てからもやるべきことはたくさんある
「モロッコでキャラバン旅がしたい」というおれの望みは動物たちの協力によって叶えられた
ならば今度はおれが動物たちを幸せにしてやる番だ

まだまだ終われないんだ!

533 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/12(日)21:52:35 e2K
そして次の日

さて、動物たちとお別れしないといけない

そして、モカが一番幸せに暮らせるのはどんな環境かを考えた結果、タンジェに来る前に通った半野生のロバがいる峠に放してやることにした

理由はたくさんあるんだけど、そのうちのいくつかを挙げようと思う
まず、半野生のロバ達がいたことからも分かるようにこの辺りはロバの供給過多であり、放したあとに悪い人間がモカを捕まえて苦しい荷役を強いるようなことが起こるとは考えにくい
そしてこの辺りは多雨地域であるため多種多様な植物が育っているから、モカは豊かな食生活を送ることが出来るはずだ
さらに、万が一誰かに飼われてしまった場合でも、この辺りの地域で飼われているロバをつなぐロープは他の地域のロープの倍以上の長さなので、モロッコの他の地域と比べるとかなり自由に過ごせるはずだ
理由はおそらくだけど多雨地域ゆえの植物の豊富さにあると思う
他の地域だと自生している植物だけではロープに繋がれたロバは生きていけない為餌を用意してやらねばならないけど、この地域なら長いロープを使えばほとんど水や餌をやらなくてもいい為、長いロープが使われているんじゃないだろうか

まとめるとこの地域はモカにとって、友達がいて、食生活も充実していて、捕まり重労働させられるリスクもほぼない
そんな素敵な場所のはずだ

そんなわけでおれは以前半野良ロバを見た峠から3kmほど離れた地点まで引き返し、そこにあった村で野宿することにした

そこではブティックの店主であるムハンマドという男がとてもよくしてくれた
食事から野宿場所まで必要なものは全て確保してくれた
冷蔵庫を開け、「好きなものを持っていけ!」と言われたがさすがに断った
それ商品www

ムハンマドさんはフェズ郊外のベルカーニ村の隣の村出身だそうだ
やはりベルカーニ村の辺りにはあったかい人がいっぱいいるようだ

野宿の為にちょうどよさそうな場所がたまたまごみ集積場の前だったこともあり、ボロボロになっていた荷車はムハンマドさんが引き取り処理をしてくれることになった

そして夜、ブティックとなりの発泡スチロール工場のハムディという男が工場のシャワーを貸してくれてスパゲティのような料理も振る舞ってくれた
このハムディとは気があい、久しぶりに会った旧友のように楽しく食事をすることが出来た

食事の後、荷車の隣に絨毯を敷いて寝転がり、星空を眺めながら物思いにふける

さぁ、明日はいよいよモカとのお別れだ…

534 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/13(月)21:59:15 jLO
次の日の朝、ムハンマドさんのブティックで朝食をいただいてから、モカと峠に向かう
これまでモカと歩いてきた道のりを思い出しながら、一歩一歩歩いていく

そして、峠に到着

モカ、ありがとう、さよならだ
幸せになってくれ
最後にモカと自撮り

no title

…お前顔でかいからムズいんだよwww

ばいばい、モカ
ほんとうにありがとう

no title

…そしてその後、一旦ごみ集積場の前に戻り、今度はバスのチケットを取りにタンジェに向かう

向かう先は森の街、アズロウだ
もちろんブラック、カプチーノ、プレッソ、ウィンナも一緒に連れて行く

本当はウィンナはタンジェで放してやる予定だったんだけど、タンジェで盗まれた時に足を怪我してしまったため、しばらく栄養をたっぷり与えて療養させようと考え連れて行くことにした

しかし、バスのチケット売り場のおっさんによると長距離バスにおいて動物は全面的に禁止らしく、さらにもちろんアズロウまではタクシーで行けるわけもなく八方塞がりになってしまった

動物たち連れてアズロウまでヒッチハイクか…wとか考えながらムハンマドさんのブティックへ戻る方向に歩きつづけ、ふと顔を見上げると鉄道駅を発見

電車!その手があった!!
途上国に電車なんて基本ないから盲点だった

さっそくチケット売り場の係員と交渉
事情を話し、頼み込むこと20分
渋々ではあるが、犬分のチケット代を払うならフェズまでなら乗ってもいいとのことだった

フェズからアズロウまでは70kmほどしかない為、最悪乗り合いタクシーなどを貸し切れば簡単に行くことができるはずだ

ムハンマドさんに事後報告とお礼をまだ言っていなかったため出発は明日にして、電車のチケットを購入し荷車のところへ戻る

そして帰ってからムハンマドさんに出発することやお礼を告げ、その日も絨毯に寝転がって星空を眺めながら眠くなるのを待つ

寝るまでの間に、この日はかなり大きな流れ星を見ることができた
あれはラテで、キャラバン旅が終わったから駆けつけてくれたんだとかいう適当な思い込みで心が満たされ、就寝

no title

537 名無しさん 2017/03/15(水)15:02:14 tk9
モカとお別れか

538 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/15(水)23:12:52 DGr
>>537
モカと過ごした日々は期間にすると短いはずなんだけど、ずいぶん長く一緒に旅してたように感じるなぁ

つづき
さて、次の日
動物たちを電車で運ぶため段ボールで一時的な家を作り、いざ出発!!

電車内ではこんな感じw

no title

no title

プレッソ、出てくんなwww

結局その後プレッソは窮屈そうだったので段ボールから出してやり、タンジェから5時間ほどかけてフェズに到着
歩いて何日もかかった道のりだけど、電車だと一瞬だw

さて、今の目的地はアズロウなんだけど、正直な話アズロウにはブラックとカプチーノだけ連れていければいいので、まずはプレッソとウィンナをしばらく預かってくれそうな人のいる、なつかしさ満点の村、ベルカーニ村へ向かうことにした

乗り合いタクシーでは乗客はおれのほかに5人ほどいたんだけど、なんとその全員がおれのことを知っていた
アラビア語のネット記事にもおれのことが書いてあるものがいくつかあったのでモロッコではかなり有名になったようだ

そして懐かしい村に到着
村の少年がいち早く気づき、おれの名前を…


少年「プレッソ!!!」

ちがうwww

539 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/15(水)23:26:17 DGr
おれ「久しぶりだw帰ってきたぜ!えぇと、Goだ」
少年「あぁ、久しぶり!分かってるよw
…アジーズはあっちだよw」

アジーズ

おれがベルカーニ村に滞在していた時、散々世話になった八百屋のおじさんであり、大切な友達だ
行先に関して自分で舵をきったとはいえ、また会えるなんてほんとに嬉しい

アジーズ「ムシューGo!!」

おれ「ムシューアジーズ!!元気してたか?」

アジーズ「あぁ、神様のおかげでな!」

おれ「神様のおかげだな!おかげさまでおれも無事タンジェまでたどり着けたよ!」

アジーズ「そうかそうか、よかったじゃないか!
またベルカーニに戻ってきてくれるなんて最高だ!

…これがあのプレッソか?
めちゃくちゃでかくなったなぁ…(ベルカーニ村に来たときプレッソは生後1ヶ月だったけど、今はそれから1ヶ月半ほど経過していた)
それでGo、これからはどうするんだ?」

おれ「プレッソもまだ幼いしウィンナも怪我してるから、これからしばらくモロッコで暮らすことにした!
とりあえず明日にわとり達を連れてアズロウに用事があるから、明日プレッソとウィンナを預かってほしいんだけど、大丈夫?」

アジーズ「もちろん大丈夫だ!今晩はまたおれの八百屋の隣で寝るといい」

そんなわけでその日の夜はベルカーニ村の懐かしい面々と再会できた喜びを分かち合い、次の日、ブラック、カプチーノを連れてアズロウへ!!

歩いてきた道のりを車で移動することで、自分が点の旅じゃなく線の旅をしていたんだっていう不思議な感覚を覚えることが出来た

そしてアズロウへ到着

おれが向かう先はもちろん…

ラブハー「久しぶりね、Go!!」

543 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/16(木)23:24:24 YAy
つづき

ラブハーが登場したのはこのスレでは5ヶ月以上前だからおまえら的には「ラブハー?誰?」って感じだろうけどwww

ラブハーは、おれがアズロウの森滞在中に水や夜間寝る為の小屋を提供してくれた女性で、アズロウの森総責任者の娘だ

実は今日、おれはブラックとカプチーノをラブハーに託したくてアズロウまでやってきた
タンジェに着くまでの間、ブラック、カプチーノをどうするかについてはかなり悩んだ
始めは安全そうなところに放せばいいかと思っていたんだけど、夜中に獰猛な野犬が出てこないとも限らないし、何より人間がにわとり達を見つけてしまえば飼育し始め、卵が産めなくなった時点で殺して肉を食べてしまうだろう

その点、ラブハーににわとり達を預けるのは最良の選択に感じられた

546 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/18(土)00:35:42 FDW
つづき

さて、残るはプレッソとウィンナだ

ウィンナに関してはどこで放してもそう変わらないだろうからいいとして、問題はプレッソだ

実はおれは、最終的にプレッソをベルカーニ村の野良犬にしてやろうと考えていた
フェズ郊外というだけあってあの辺りには食べ物がたくさんあり、小型犬から大型犬まで野良犬がたくさん暮らしているからプレッソとしても楽しいんじゃないかと考えたからだ

その為にもまず、野良犬として生きていけるよう、ベルカーニ村でプレッソを3ヶ月ほど訓練するべきだとおれは考えていた

そんなわけでアズロウからベルカーニ村に戻った俺は早速アパート探しをし始めた

ベルカーニ村は友達がたくさんいる村だったから皆「おれの家に住みなよ」と声をかけてくれたけど、最終的にアジーズに「ルームシェアしないか?」と誘われたのでアジーズと、アジーズの友達と3人でアパートを借りてルームシェアをすることになった

ちなみに家賃は水道光熱費込みで月1万円くらいで、おれが負担したのは4千円だ

おれの部屋は一番広い部屋で、もちろんプレッソ、ウィンナと一緒だ

no title

プレッソちょっとでかくなったw

そして、プレッソが野良犬になっても楽しく過ごせるように特訓する日々が始まった

食事の時おれはプレッソに、「食事が欲しい時は相手から少し離れて行儀よく座っていれば食べ物がもらえる」ということを繰り返し教え込んだ
また、「お手」、「待て」、「よし」、「やめろ」、「こっちへ来い」などの基本的な指示をフランス語で教えた
ペットというより番犬として犬を扱うモロッコではきちんと指示に従う犬は珍しかったらしく、たくさんの人がプレッソを利口な犬だと褒め、可愛がってくれた
また、無教養な人や犬を軽んじている人たちは総じてモロッコ語でプレッソに命令しようとするため、フランス語で調教されたプレッソは全く反応しなかった

さらに、ひもや棒を使った遊びの延長線上で、悪い子供に攻撃されないようにひもや棒の軌道を読んでかわす練習もしたし、散歩の時なんかは食べられるものと食べられないものを見分けられるよう、色々な食べ物に触れさせた

成長期の今のうちにタンパク質を摂り、強靭な肉体になるように卵や肉、牛○を十分量計算して毎日与え続けた

散歩は1日2~3回、最初は1回45分ほどだったけど、他の犬と触れ合う時間を増やしたかったので少しずつ伸ばしていった

生後1ヶ月でキャラバンに加わったプレッソに圧倒的に足りていなかったのは社交性だと考えていたため、ベルカーニ村内でプレッソのお兄さん的存在になってくれる攻撃的でない犬を探し、餌付けしてプレッソと仲良くしてくれるように取り計らった

それがこいつ、ドリップだ

no title

548 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/18(土)22:54:49 FDW
おまけ
動画アップロードはよくわかんないから見れなかったらごめん

強大な宿敵と死闘を繰り広げるプレッソ

no title

プレッソとドリップ1

no title

プレッソとドリップ2
プレッソもそろそろ思春期らしくて腰振る練習してるけど、ドリップはオスだからな?w

no title

549 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/18(土)23:30:09 FDW
つづき
そんなこんなで月日は流れていったんだけど、途中からプレッソを是非飼いたいというおっさんが現れ、熱心におれやプレッソに頼みに来るようになった

皆からキングと呼ばれているそのおっさんはアジーズの友達であり、村の駐車場スペースの警備員をしているずんぐりした短髪の男だ
キングと聞いて、いつも宙に浮いてる妖精族のキャラクターをイメージした人もいるだろうけど、見た目に関してはそのおっさん状態の姿と酷似している

正直、おれはプレッソが誰かに飼われることに対して否定的な見方しかしていなかった
動物に対する姿勢に関しては昔出会ったラクダ飼いのサリーマンという男を尊敬しているおれとしては、広い世界を自由に駆け回ることこそ動物が動物らしく生きれている状態だと考えたからだ

ただ、そもそもおれが反対したところでおれの帰国後は野良犬となったプレッソをキングが持ち帰ってしまえばそれで終わりだし、何よりプレッソ自身おれ以外では唯一キングに懐き、言うことを聞いていた
キングに飼われていれば食べ物に困ることもないだろうし、あとは自由に運動できる環境さえあればプレッソはより幸せに暮らせるかもしれない

結局、約2ヶ月に渡るキングの説得におれが折れ、プレッソはキングに飼われることになった
ただし、条件として昼間や深夜に警備員として働いている間などは出来る限りプレッソを外で自由にさせてやること、という約束は多くの人のいる場所でしたため、キングもある程度は守ってくれるだろう

写真はおれの帰国直前のプレッソ
1レスでいきなりでかくなってごめんwww

no title

no title

そしてウィンナ
もともとおれへのプレゼントであったウィンナも、贈り主のアジーズの強い要望により、おれの帰国後1ヶ月ほどアジーズの八百屋で飼われることになった
なんでも伝書鳩のように調教して戻ってくるようにしたいらしい
ウィンナは一応鳩だし頭もいいはずだから不可能ではないだろう

no title

ウィンナはもともとケージで生まれ育っていた売り物だったわけで、自然界で生きていけるかどうか難しい面もあったため、かえってこっちの方が幸せになれるかもしれない

こうして、完全に想定していた通りではないにしろ、コーヒーキャラバンの皆はそれぞれの土地でそれぞれの人生を歩み始めることになった

そしておれは、動物たちとモロッコを横断したという経験や思い出と共に、次の冒険に向けて準備をするために日本に帰ることにした

552 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/19(日)22:48:30 dW2
日数や距離のまとめ!

今回のモロッコ横断にかかった日数:74日間

総距離:1059km

内訳
モカと旅した距離:1059km
ラテと旅した距離:470km
ブラック・カプチーノと旅した距離:948km
プレッソと旅した距離:604km
ウィンナと旅した距離:591km


さて、最後におれ自身のことを少しだけ話して今回の話を締めくくろうと思う

現在、観光業の発展や法整備、治安の安定によって海外は多くの点で昔と比べてとても身近なものになっている
20万円ほどあれば世界中どこでもツアーを組んで観光することができるし、日本にいながらガイドを雇う予約を入れたり海外旅行保険に入ってほぼリスクのない状態で渡航したりすることもできる
ただしその一方で、見方を変えればそれは、行ける場所が限定された、すなわち簡単に行けない場所にアクセスするのが昔以上に難しくなったとも言えるとおれは考えている

1970年代や80年代に海外で情熱を燃やしていた冒険家たちの時代とは異なり、現在は観光業の発展による人々の常識の推移、そして法整備によって、昔を生きた彼らと同じように「冒険する」ということがかなり難しい時代になってきているように感じる

そんな今の世の中ではあるものの、冒険という観点において悪いことばかりではなく、
GPS搭載のモバイルデバイスや3Dプリンタ、ドローンなどの進歩、そしてネットの存在によって情報収集や技術習得が容易になったことなどで、むしろ昔では考えられなかったスタイルの冒険が可能だと言うことも出来る

おれはそんな「現代だからこそできる冒険」を探究していきたいと考えていて、時には動物の力を借り、時にはデバイスや機械の力を借り、いつの日か、自分しか見ることのできない景色、人生観を得たいと考えている

その為にはもっと強くなる必要があるし、最終的に主観を磨きたいなら客観は必要不可欠な要素であるからもっとたくさんフィードバックを集めたり人前に出たりする必要があるので、ここでおれの素性を少しだけ明かそうと思う


おれの本名は豪太郎

動物やデバイスの力を借りて、「現代だからこそできる冒険」を探究する駆け出しの冒険家、豪太郎だ!

no title

おしまい

553 名無しさん 2017/03/19(日)23:46:28 Bhd
面白かったよ
ありがとう

また次の冒険報告待ってる

556 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/20(月)20:47:54 Hps
>>553
ありがとう!!
次は多分8-11月頃だと思う!

559 名無しさん 2017/03/29(水)20:17:54 oE8
いやー、いっきに読ませて頂きました
動物達との珍道中楽しかった
あんなに人を警戒してたモカも愛情をもって接すれば心が通じ会うんですね

561 1◆jHsnWuH7MU 2017/03/31(金)16:35:59 jSo
>>559
機嫌のいいとき限定だけど、モカはおれが呼ぶと傍まで来るからみんなびっくりしてたw
ロバは普通そんなに懐かないし賢くもない、ってなw

ラクダ遊牧の時も思ったけど、動物たちって結構頭良いし空気も読めるんだよな…

ありがとう、次の旅は秋ごろだから楽しみにしててくれ!

560 名無しさん 2017/03/29(水)20:20:17 oE8
また旅にでたら読ませてもらいます



愛なんて 恋なんて ロシナンテ
ロシナンテ 石井竜也 チューヤン
ソニー・ミュージックレコーズ (1999-10-21)
売り上げランキング: 705,839

引用元 http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1469441371