解説していくで

1（中） 悪魔ちゃん命名騒動

1993年８月11日、東京都昭島市役所に「悪魔」と命名した男児の出生届が出された。

「悪」も「魔」も常用漢字の範囲であることから受付されたが、市が東京法務局八王子支局に本件の受理の可否につき照会したところ、子どもの福祉を害する可能性があるとして、親権の濫用を理由に不受理となった。

これに対し父親は東京家庭裁判所八王子支部に不服申し立てを行い、市と争った。

94年１月13日、審判決定に先立ってマスコミがこのことを報道し、大きく話題となる。

両親も、マスメディアに出演して正当性をアピールしていた。
そこで語られていた「悪魔」と命名する理由は以下のようなことであった。

　・誰からも興味を持たれ、普通以上に多くの人々と接してもらえることが子の利益になる

　・物おじしない野心家になって欲しい

２月１日、注目の裁判は「命名権の濫用で戸籍法違反であるが、手続き論的立場から受理を認める」との判断を下し、親側の勝訴となった。

親側の勝訴とはなったものの、これはあくまで（悪魔だけに）一旦受付けたものを両親の申請なしに市側が一方的に抹消した手続きに法的な問題があったというだけで、「悪魔」という名の正当性が認められた訳ではない。

翌日、市は「抹消の事務処理は適切だった」として、即時抗告する方針を固めた。

だが２月15日、父親が、争いが続く間は男児の名前がない状態が続くことになる上、精神的疲労や仕事にも支障が出ていることなどを理由として、不服申し立ての取り下げ手続きをした。
これにより審判は終了した。



https://youtu.be/d0be3gr8m3Y

審判は終了したものの、父親と市の攻防は続いた。
３月16日、父親は男児が悪魔との名前に反応していることを理由に「阿久魔」で届け出ようとしたが、これも不受理となった。
５月30日、父親が類似した音の名前を届け出て、市役所が同日付でそれを受理したことで、この騒動はようやく一段落となった。

松本サリンは一歩間違えれば冤罪事件になりかねなかった
胸糞な側面もある事件やで

父親は「とんねるずの生でダラダラいかせて」、「進め！電波少年」などにも出演し、時の人となったが、96年に覚醒剤取締法違反で逮捕されている。
2014年には再び覚醒剤取締法違反で逮捕されているほか、窃盗事件も起こしている。

“悪魔ちゃん”は96年に両親が離婚し、親権者の父親が逮捕・収監されたため、児童養護施設で育てられたという。

悪魔くん騒動が起きていた1994年春、
悪魔であるデーモン閣下は二股交際騒動で大スキャンダルを引き起こしていた

2（三） 埼玉愛犬家連続殺人事件

93年に事件発生、94年に事件が明らかになるとともに一部被害者の遺骨や遺留品が発見され、95年に主犯逮捕と年をまたいでおり、どの年に入れるか迷った事件であるが、世間に衝撃を与えたという点を重視し、本年で採用する。

埼玉県熊谷市にあった元夫婦（税金対策のため偽装離婚していた）の関根元（当時53歳）と風間博子（当時38歳）が経営するペットショップ「アフリカケンネル」は、詐欺的な商売を繰り返しており、顧客らとの間でトラブルが絶えなかった。
一方でブリーダーとしての腕は非常に高く、業界内で彼らの名は知られた存在であった。
しかし、バブル崩壊後の売り上げの減少に加え、豪華な新犬舎兼自宅の建設などにより、借金がかさみ、店の経営に行き詰まっていた。

関根と風間

93年４月、会社役員（当時39歳）を犬の高額売買をめぐるトラブルから、知り合いの獣医師から譲り受けた犬の殺処分に用いる「硝酸ストリキニーネ」入りカプセルを栄養剤と偽って飲ませ、殺害。

７月には暴力団幹部（当時51歳）に男性殺害を察知され、金を要求されたことなどから、幹部の運転手（当時21歳）とともに同様の方法で殺害した。

さらに８月には、犬の高額売買をめぐるトラブルから主婦（当時54歳）も同様の方法で殺害した。

一連の事件で特筆されるのは、関根が「ボディを透明にする」と呼んだ猟奇的な遺体の処理方法である。
被害者４人の遺体は店の役員（実際は関根の運転手や手伝いをしていたにすぎなかった）Ｙ宅の風呂場で解体され、骨・皮・肉・内臓に分けられた上、肉などはサイコロステーキサイズほどに切断した。
Ｙ宅は山奥にあり周囲に人家がなかったこと、妻と離婚して１人で暮らしていたことなどから、犯行に適した場所であった。

骨はドラム缶で衣服や所持品と共に、灰になるまで焼却され、それらは全て群馬県内の山林や川に遺棄された。
遺体をそのまま焼くと異臭が発生するため、解体して骨のみを焼却したという。
燃え残りが出ないよう、１本ずつじっくり焼く念の入りようであった。

Ｙによると関根は
「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなしだ」
「死体がなければただの行方不明だ。証拠があるなら出してみろ。俺に勝てる奴はどこにもいない」
「最初は俺も怖かったが、要は慣れ。何でもそうだが、一番大事なのは経験を積むこと」
などのコメントを残している。

なお、関根は暴力団関係者と付き合いがあり、ヤクザの金に手をつけた事情で左手の小指を詰めていた（周囲にはアフリカでライオンに噛まれたと吹聴していた）。

94年１月、本事件とは無関係であるが、愛犬家の失踪という点で共通点がある「大阪愛犬家連続殺人事件」の犯人が逮捕される。
この事件の報道がきっかけとなり、埼玉でも同様に愛犬家が失踪しているとの噂が流れ始めた。

２月からはマスコミが取り上げるようになり、一気に事件が表面化し、ワイドショーなどでも連日報道された。
関根は身の潔白を主張する一方、失踪者の家族らは事件性を訴え続けた。
しかし、証拠が無い状態では疑惑の域を出なかった。

県警はＹを事件解決の突破口にしようと事情聴取を行った。
当初Ｙは事件への関与を否定していたものの、やがて犯行に関与したことを自供した。

12月13日、Ｙの供述に基づき群馬県片品村で被害者の１人の遺骨や遺留品が発見された。

年は明けて95年１月５日、県警は関根と風間を死体損壊・遺棄容疑で逮捕。
８日にはＹも同容疑で逮捕された。

裁判では、関根はすべての事件への関与を認めながらも、全ての事件について風間が首謀で、殺害の実行には加わっていないと主張。
一方、風間はすべての事件で関根が首謀だったとし、暴力団幹部と運転手の２人に対する死体遺棄事件への関与だけ認めている。
また、両被告はＹが殺害の実行行為者であると主張し、審理は泥仕合の様相となった。

浦和地裁は両被告が対等の立場で共謀し、犯行に及んだと認定。
2001年３月、両被告に死刑判決を言い渡した。

東京高裁、最高裁ともに上告を棄却し、09年６月に死刑が確定した。

関根は死刑執行前の2017年に東京拘置所で病死した（75歳没）。
風間は2021年現在、東京拘置所に収監されている。
戦後日本では12人目の女性死刑囚である。

また、捜査段階で全面自供し、事件解明に協力したＹは、検察との密約があったために自供したと主張。
約束を反故にされたとして、今後の公判では証言拒否する構えを見せた。

Ｙによれば取り調べの際、浦和地検熊谷支部の担当検察官が「自供すれば殺人を不問に付す」などと話したという。
検察側はこれを否定し、Ｙは懲役３年の実刑判決を受けている。

関根らが逮捕された直後の95年１月17日、阪神・淡路大震災が発生し、報道における本事件の扱いは縮小を余儀無くされた。
その後もオウム真理教事件が相次いだことにより、事件の規模や異常性のわりに知名度は低いと言えるかもしれない。
先述の大阪愛犬家事件と混同されることも多い。

また、本事件をモデルにした園子温監督の映画『冷たい熱帯魚』が製作されている。
関根をモチーフにした人物を演じた、でんでんの怪演が有名である。

主犯である元夫婦が経営していた「アフリカケンネル」は、事件後すぐに倒産し廃業となった。
しかし、犬舎兼事務所だった建物は現在も熊谷市内に廃墟となって残っている。

アフリカケンネル跡

3（左） 松本サリン事件

６月27日、オウム真理教信者らにより、長野県松本市内で神経ガスのサリンが散布され、死者８人を出したテロ事件。
戦争状態にない国において、サリンのような化学兵器クラスの毒物が一般市民に対して無差別に使用された世界初の事例であり、同じくオウム真理教による地下鉄サリン事件を除けばその後も類が無い。
また、無罪の人間が半ば公然と犯人として扱われた冤罪未遂事件・報道被害事件でもある。

事件から１週間後頃の報道



https://youtu.be/R-Vaacw5ZK0

オウム真理教は松本市に支部を開設しようとしたが、購入した土地をめぐって地元住民とトラブルになった。
７月19日に長野地裁松本支部で予定されていた判決で敗訴の可能性が高いことから、前年製造に成功していたサリンのテストを兼ね、教祖・麻原彰晃（当時39歳）は裁判官や反対派住民への報復を計画し、信者に命じ実行したとされる。

６月27日午後10時40分ごろ、村井秀夫、新実智光、遠藤誠一、端本悟らの実行部隊が裁判官官舎西側で、河野義行（当時44歳）宅の敷地に隣接する駐車場に噴霧車とワゴン車を止め、およそ12リットルのサリン（純度70％）を大型送風機で約10分間噴射した。

これにより翌朝までに７人が死亡、重軽傷者600人を出す大惨事となった。

事件発生直後は犠牲者の死因となった物質が判明せず、またその物質の発生原因が事故か犯罪か、あるいは自然災害なのかも判別できず、新聞紙上には「松本でナゾの毒ガス７人死亡」といった見出しが躍った。


第一通報者で被害者の河野義行は、警察の家宅捜査を受け、薬品類など二十数点を押収された。
さらに河野には重要参考人としてその後連日にわたる取り調べが行われた。

長野県警は河野宅から押収した農薬からはサリン合成が不可能であることから、一部の農薬を家族が隠匿したとして執拗に捜査を続け、捜査方針の転換が遅れることとなった。
また、長野県警は事件発生直後の「不審なトラック」の目撃情報を黙殺した。
捜査員の１人の「裁判所官舎を狙ったものでは？」との推測も、聞き入れられなかった。
さらに、河野が救急隊員に「除草剤をつくろうとして調合に失敗して煙を出した」と話したとする虚偽の情報をマスコミにリークするということまで行っている。

地元紙の信濃毎日新聞や主要な全国紙を含め、多くのメディアは警察の発表および情報のリークを無批判に報じ、河野が犯人であるかのように印象付けられた。

河野は証拠不十分で逮捕こそされなかったものの、翌年の地下鉄サリン事件発生まで疑惑の目を向けられ続け、自宅には全国から一般人による多くの誹謗中傷の手紙が送りつけられたという。

無実が明らかになった後も、当時の国家公安委員長野中広務が謝罪に訪れたものの、長野県警は、本部長が「遺憾の意」を表明したのみで「謝罪というものではない」と直接謝罪はなかった。
しかし、2002年に長野県公安委員会に河野が就任し、長野県警本部長がかつての捜査について謝罪せざるを得なくなり、初めての謝罪をした。

マスコミ各社は謝罪文等を掲載し、報道各社の社員個々人による謝罪の手紙は多数あったものの、河野への直接謝罪は皆無である。

また、この時の報道や専門家の話の影響により、現在でも農薬からサリンが製造できるという誤解が根強く残っている。

事件から14年後の2008年８月５日、本事件による負傷の加療中であった河野の妻が死亡した。
これによってこの事件による死者は８人となった。

4（一） 井の頭公園バラバラ殺人事件

４月23日午前、東京都三鷹市にある「井の頭公園」のゴミ箱に、ポリ袋に入った人間の足首が捨てられているのを、清掃員の女性（当時59歳）が発見した。

この女性はネコやカラスに餌をやる習慣があったようで、中に「魚の切り身か豚肉」が入っているように見えたという半透明のビニール袋を開けようとした。
だが、袋は固く結ばれており、開けることができなかったため、竹串を用いて袋を破いた。

その中に入っていたのは人間の足首であった。

駆けつけた警察官らが公園一帯を捜索したところ、計27個に切断された手足・胴体の一部が袋に入れられ、７か所のゴミ箱から発見された。
しかし、それら全部を合わせても体全体の1/3程度、重さ20kg程度にしかならず、頭部と胴体の大部分は見つかっていない。

袋は小さい穴のある水切り用の黒い袋と半透明の袋の二重になっており、一度包んで結んだものを結び目でひっくり返して、もう一度同じ袋で包むという厳重な梱包の仕方であった。
これは調理人や漁師らが内容物の水や臭いを外に漏らさないためによく用いる方法であるため、その方面の仕事をしている者の犯行ではないかという見方も根強い。

さらに、遺体の処理方法も特殊なものであった。

血液は洗ったかのようにほぼ全て抜き取られており、各断片は計ったようにほぼ22cmの長さに揃えられ、太さも20cm以下に揃えられていた。
多くのバラバラ殺人では、切断しやすい関節の部分で切るのが一般的であるが、この事件の遺体は関節を無視して一定の長さに切断されている。

当時、井の頭公園に設置されていたゴミ箱は縦20cm×横30cmのフタがついたポスト型のものであった。
すなわち、このゴミ箱に入れるのにジャストサイズに切断されていたことになる。

手足の指紋はほぼ全て削り取られていたが、外傷や毒殺されたような跡もなく、死因は不明である。
死亡推定時刻も「そんなに古いものではない」ということくらいしか分かっていない。

また、遺体の切断面から手ノコが用いられたことが分かっている（電動ノコギリではない）。

遺体発見３日後の４月26日、僅かに残っていた指紋とDNAから、被害者は公園の近くに住む一級建築士の男性（当時35歳）と判明した。
しかし、被害者の交友関係からは全く犯人像が浮かばず、犯人に結びつく物証や情報も乏しいことから捜査は難航した。

数少ない目撃情報や証言には以下のようなものがある。

・被害者によく似た男性が、被害者宅の最寄り駅で事件現場近くのJR吉祥寺駅そばのデパート脇で２人組の男（ともに30代とみられる）に殴られていたという証言
・遺体が発見された日の午前４時頃に井の頭公園をポリ袋を持った不審な男２人（ともに30代とみられる）が歩いていたという証言
・失踪したと思われる時間帯に人と車が激突するような物音がしたという情報

しかし、これらの情報も犯人逮捕には繋がっていない。

また、事件の約11ヵ月後には地下鉄サリン事件が起きたことから、警視庁捜査一課の本事件の捜査員もオウム真理教事件に招集され捜査本部は解散となり、三鷹署に単独で引き継がれることとなった。
その後、捜査一課が本事件を担当することはなく、人員が大きく減少したことも捜査を難しくさせた。

当初は多くの注目を集め、マスコミでも大きく報じられた本事件であるが、３日後の４月26日に名古屋空港で264人の死者を出す中華航空140便墜落事故が発生。
マスコミがこの墜落事故を集中報道したことで、バラバラ殺人事件に関する報道は一気に激減した。
その後も、新たな情報に乏しいことなどからあまり大きく報道されることはなくなったが、短期間で非常に大きなインパクトを与えた事件と言えるだろう。

そして15年後の2009年４月23日午前０時、公訴時効が成立し、本事件は迷宮入りとなった。

稀に見る不可解な事件であることから、現在も多くの推測・考察がなされている。
人違い殺人説や事故遭遇説、宗教団体関与説、また被害者が一級建築士であることから05年に発覚した耐震偽装問題と絡めた説など様々な説が錯綜しているが、長くなるので詳細は割愛。

その道の大家である「オカルト・クロニクル」やブログ「雑感」で秀逸な考察がなされているので興味がある方はそちらを一読することをおすすめする。

「オカルト・クロニクル」には当時現場近くに住んでいたという男性から、遺体発見前日の夜に「髪を焼くような異臭が漂ってきた」という興味深い証言も寄せられている。

5（指） 中華航空140便墜落事故

４月26日日本時間20時15分ころ、台湾・中華航空（現チャイナエアライン）のエアバスA300型機が名古屋空港への着陸進入中に墜落し、乗員乗客271人中264人が死亡した。
乗客のうち153人が日本人で、63人が台湾人だった。

日本の航空史上、1985年の日本航空123便墜落事故（死者520人）に次ぐ大惨事となり、平成最悪の航空機事故ともなった。

当時の報道の様子



https://youtu.be/mIJnDetUDoI

名古屋空港への進入は副操縦士による、手動操縦で行われていた。
着陸に向けて順調に下降を続けていたものの、偶然副操縦士の指先が復航モード（着陸やり直しモード）のレバーに触れてしまい、エアバスA300の機首は上がり始めた。

機長と副操縦士は、着陸やり直しモードを解除して着陸モードへ変更しようとするが、どうしても上手くいかなかった。
変更作業がうまくいかなかったのは、エアバス社がコンピュータ重視の設計思想を取り入れていたためと考えられる。
当時のエアバス社製の飛行機は、人間よりもコンピュータの方が信頼できるという発想に基づいて、ひとたび特定のモードになった場合は、操縦桿を操作するだけでは手動操縦に切り替わらず、コンピュータの指令が優先されるようになっていた。
パイロットがモードを切り替えるためには、単に「着陸モード」のスイッチを押すだけでなく、ゲームでいうところのコマンド入力のような操作が必要であった。

その操作の複雑さから、いわゆるヒヤリ・ハット事例が数件発生しており、事態を重く見たエアバス社はコンピュータの仕様変更を決定し、操縦桿を強く押し込む事で即座にモードが解除される仕様に変更することを発表していた。
各航空会社に修繕するように勧告していたが、リコールのような強制力が無いものだったため中華航空は、これを先送りしていた。

事故機の２人のパイロットには、この操作を十数秒間のうちに思い出すことが要求された訳だが、パイロット優先のボーイングの機体に慣れていたためか、それができなかったのである。

飛行機のコンピュータは上昇しようとし、パイロットは強引に操縦桿を押して着陸しようと相反する指令が出された結果、機体は非常に不安定な状態となった。
加えて自動失速防止機能が作動、機首上げ方向へのさらに大きな力が発生し、飛行機は棒立ちのように状態になってしまった。
これも、コンピュータの指令を優先した設計が裏目に出たものである。

その結果、機体は一気に失速して500ｍ近い高さから滑走路に叩きつけられ大破・炎上した。
副操縦士の誤操作から２分足らずの間の出来事であった。

再現アニメーション



https://youtu.be/mePVz9OhAEI

6（遊） 大阪・愛知・岐阜連続リンチ殺人事件

９月28日から10月８日にかけ、未成年の少年らのグループ計10人が、大阪、愛知、岐阜の３府県で４人をリンチにより死亡させた事件。
３府県連続リンチ殺人事件、木曽川・長良川等連続リンチ殺人事件などとも呼ばれる。

一連の事件では暴力団組員１人を含む成人３人と未成年者７人の男女計10人が犯行に関与したと認定され、起訴された８人の有罪判決が確定・２人が少年院送致された。
このうち一連の３事件すべてに関与し、暴力団に所属していた主犯格３人（小林正人・小森淳・芳我匡由）は全員が事件当時少年でありながら死刑判決を受けた。

各事件概要は以下の通り。

・大阪事件

少年らが暴力団員としての「義兄弟関係」を結んでから２週間後の９月28日に発生。
午前３時頃、大阪市中央区道頓堀一丁目の繁華街で被害男性Ａ（無職・当時26歳）に因縁をつけ、暴力団事務所に拉致し、19時間にわたって監禁・暴行を繰り返した。
そして最後はベルトを使って絞殺した。
その後少年らは、暴力団員に遺体の処分を相談し、高知県安芸郡奈半利町の山中に遺棄した。
男性の遺体は11月22日に毛布に包まれているところを発見されたが、凄まじい暴行の痕があったという。

この事件から２日後の10月１日、小林正人と大阪事件に加わっていた少年Ｕの２人が高校生３人組から現金55,000円とネックレス２本をカツアゲし、さらに因縁をつけ暴行を加えた。
被害者らが親に被害を打ち明け、警察に通報したため、Ｕは翌日にパトロール中の南警察署署員に逮捕された（その後、保護観察処分）。

恐喝事件の捜査のため事務所の一室へ大阪府警が家宅捜索に入った。
これを受け、当時偶然にも外出中で警察の手を逃れた大阪事件主犯の３人はそのまま愛知県へ逃走した。

・木曽川事件

10月６日、愛知県稲沢市のシンナー仲間である男性Ｘ（当時21歳）の家に上がり込んだ一行は、愛知に住む友人らを加えてシンナーパーティーを始める。
１時間後にはシンナーが足りなくなったため、Ｘが近くに住む不良グループの仲間である男性Ｂ（型枠大工・当時22歳）にシンナーを持ってくるように依頼した。
小林とも知り合いだったＢは、かつて交際していた女性を小林から強姦同然に奪われた過去があったことで言い争いとなり、リンチが始まった。

ビールの空き瓶や箒の柄などで殴打した後、頭部の傷口をフォークで突き刺し、ウィスキーや醤油をかけて反応を見るという凄惨なリンチであった。
リンチは７時間弱にもおよび、意識が低下していたＢは尾西市の木曽川堤防に連れて行かれ、鉄パイプで全身を殴られ、シンナーの袋などを使って体の一部を焼かれた。
Ｂは雑木林に放置され、その直後まで細い声でうめいていたが、やがて死亡した。

死体は事件から６日後の10月13日に発見されたが、ほとんど白骨化した状態で、その重量は約12.5 kgしかなかった。

・長良川事件

10月７日深夜、愛知県稲沢市のボウリング場の駐車場でＣさん（フリーター・19歳）、Ｄさん（会社員・20歳）、Ｅさん（大学生・20歳）の３人に因縁をつけ、暴行を加え、金品をまきあげたうえで拉致。

その後、ＣとＤを岐阜県安八郡の長良川の堤防に連れだし、鉄パイプでめった打ちにし殺害した。
２人は頭蓋骨を含む全身骨折、体中の血管が裂けて大量出血するなど無残な遺体で発見された。

なお、Ｃ・Ｄとは別の車で拉致されていたＥのみは最終的に解放されている。

10月８日早朝、長良川事件の現場付近を通りかかったトラック運転手によりＣ・Ｄの遺体が発見され、事件が発覚。
Ｅの証言などから少年らは逮捕される。

芳我のみは一連事件の被疑者の中で最後まで逃亡していたが、阪神・淡路大震災発生の翌日である95年１月18日に和歌山市内のラブホテルで女性と一緒にいたところを取り押さえられている。

一連の事件の裁判当初、主犯格３人は傍聴席を一睨みして被告人席へ着席したり、関係者とされる若者が傍聴している姿を見て彼らに視線を送って笑いかけるなど全く反省の様子がない態度をとっていた。

「未成年だから死刑は無い」と考えていた３人は、検察に死刑を求刑された途端に態度を変え、「生きて償いたい」というようなことを言い出し始め、遺族に謝罪の手紙を送るようになったという。

また、誰が首謀であったのか等を巡り、責任のなすりつけ合いも始まった。

さらに、犯行に反対していたグループの仲間である２人の少女の殺害も計画していたことも明らかになった。

2001年７月９日、一審の名古屋地裁で小林は殺人罪で死刑、小森と芳我は傷害致死罪で無期懲役が言い渡された。

この判決に遺族からは不満の声が上がり、弁護側・検察側共に判決を不服とし控訴した。


05年10月14日、名古屋高裁での控訴審判決では３被告人全員に検察側の求刑通り、死刑が言い渡される。

１つの少年事件で複数に死刑が言い渡されるのは初めてのことであった。


2011年３月10日、最高裁は「11日間という短期間に犯行を重ね、執拗で残虐」として、上告を棄却し３人の死刑が確定した。

元少年らは現在40代後半となり、小林は東京拘置所、小森と芳我は名古屋置所に収監されている。

最後に、11年に実施されたアンケートに答えた小林と小森の回答を掲載する。

◆小林死刑囚
こちらの主張に真剣に向き合って判断してくれる裁判官に出会いたい。その人に出会えるまで戦い続ける。東京拘置所職員の一部は良い職員だが、ほとんどは礼儀を弁えない駄目な職員だ。自分は動物園のサルではない。

◆小森死刑囚
「裁判所は事件の真実を分かってくれるのではないか」と思っていたが、その考えが甘かったことを実感している。大罪を犯した者は「事件の事実に沿った裁きを受けたい」と思ってはいけないのだろうか？

7（右） 福徳銀行５億円強奪事件

８月５日午前９時20分頃、神戸市中央区三宮町の福徳銀行神戸支店の車庫にて、行員３人が現金輸送車から現金が入ったジュラルミンケース３個を下ろそうとしたところ２人組の男が近づき、行員らに拳銃のようなものを向けてジュラルミンケース３個に入った現金約５億4100万円を強奪した。

男２人は乗り付けてきた車を猛スピードでとばして逃走、車は現場から600mの路上に乗り捨てられており、盗難車と判明した。

行員３人より、２人組の犯人のうち短銃を持っていた方は「40歳くらい。身長170cmくらい。グレーの作業服にサングラス」、もう１人は「50歳ぐらい。身長172cmくらい。ベージュの作業服。顔にミイラのように包帯を巻いていた」との証言が得られたが、犯人逮捕には至らなかった。

５年後の99年10月、事態が動く。
奪われた札の記番号と一致する札が換金されたという情報と、元会社員が知人に犯行を打ち明けたという情報から、元暴力団員Ａと元会社員Ｂが容疑者として捜査線上に浮上。
11月、捜査当局は犯行を知人に打ち明けたＢを事情聴取したが、Ｂはその直後に自殺した。

元暴力団員Ａは事件の後で海外渡航を繰り返しており、公訴時効が約８か月延長されていたが、2002年４月１日、公訴時効が成立した。

時効成立により闇に葬られたはずの本事件であったが、13年後の2007年に思わぬ展開を見せる。

２月９日午前９時20分頃、元暴力団員Ａは愛知信用金庫西大須支店で別の現金強盗事件を起こして駆け付けた警察に逮捕された。
しかし、５億円強奪事件については公訴時効が成立していたため起訴できず、また捜査員が５億円事件について質問してもＡは黙秘を貫いた。

本事件は金融機関における１回での現金強奪金額としては最高金額であり、史上最大の銀行強盗事件と言われている。
また、自殺したＢはグリコ・森永事件にも関わっているのではないかという説がある。

8（捕） 福島県原町市成人女性行方不明事案

２月19日、歯科助手兼受付の増山ひとみさん（当時21歳）が福島県原町市（現・南相馬市原町区）の勤務先から帰宅途中に行方がわからなくなった。

ひとみさんは３週間後に結婚を控えており、失踪当日は最後の出勤日だった。
土曜日で午後は休診だったため、13時10分頃ひとみさんは花束などをもらって退勤した。

なお当日の12時半頃、ひとみさん宛てに歯科医院に１本の電話が入っている。
最初に応対した同僚によると相手は若い女性の声で、ひとみさんは時間を気にした様子で何かを話していたが、親しい感じではなかったという。

13時40分頃、歯科医院の同僚が医院から北に約１㎞ほどの距離にあるコンビニエンスストア裏の空き地にひとみさんの車（黒のアルトワークス）が駐車されているのを見ている。

翌20日に父親が調べたところ、車内に退職祝いの花束、上着(ダウンジャケット)、財布や手帳、婚約指輪などが入ったショルダーバッグが残ったままで、車は鍵がロックされていた。

ひとみさんの結婚が決まった頃から、増山家には無言電話がかかってくるようになってきていた。
結婚する両家が集まって結納を交わしたのを境に、無言電話の回数が増し、午前０時、１時、２時、３時、４時と１時間おきにかかってきたという。

しかし、ひとみさんが失踪した途端に、それまで毎晩かかってきていた無言電話がピタッと収まった。

さらに、ひとみさんの車にコイン等で傷をつけられ、「ブス」や「バ○」などといった誹謗中傷の落書きをされていたこともあった。

また、ひとみさんが日記代わりにしていた手帳には婚約者の二股を臭わすメモ書きがあった。
失踪前の１月25日付で、「お昼休みに、○○(具体的な名前)という女からTel。●●(婚約者)には切れてない女がいたらしい。でも割と冷静。勘が当たってた。●●(婚約者)は嫌がらせだという。そんな女は知らないと否定、信じよう」と書かれていた。

大きな進展もないまま、ひとみさん行方不明から１年が経とうとしていた翌95年１月４日、増山家に不審な電話がかかってきた。
結果として、この不気味な電話によって本事件の認知度は非常に高いものになっているわけであるが、相手は「お姉ちゃんだよ」と語りかけ、さらに「ひとみです」と名乗った。

実際に音声を聴いてもらえば分かるが、50代以上の女性といった感じのねっとりボイスで、両親もひとみさんの声とは全く異なると断言している。

4:35頃より音声



https://youtu.be/N9otSAFHisA?start=275

後の調査でこの電話は、増山家と同一局内の公衆電話からかかってきたものだと判明している。


さて、本事件では当然ひとみさんの婚約者やひとみさんの手帳に名前が上がっていた女（名前自体は偽名であったとみられている）が怪しいと見る向きが強いのであるが、完璧なアリバイが存在したのか、逮捕には至っていないし、厳しく追及されたという話も伝わってこない。

逆にひとみさんの婚約者は元カノとすぐに寄りを戻して結婚したとか、その元カノの父親が地元で有力な暴力団員であるとかいうきな臭い噂ばかりが出てくるのである。
もちろん明確なソースはなく、噂話の域を出ないが、そうであると仮定するなら否が応でも筋書きが見えてきてしまう事件ではある。

両親はテレビの捜索系番組にも出演し情報提供を呼びかけている。
また、震災後も自宅を離れず、ひとみさんの帰宅を待っているという。

https://www.police.pref.fukushima.jp/keisou/johofiles/s_souma01.html

ワイは聞かんぞ?

9（二） 日本テレビ郵便爆弾事件

12月21日17時45分頃、東京都千代田区の日本テレビ放送網本社西本館に届いた郵便物の中に、人気子役だった安達祐実（当時13歳）宛のものがあった。
縦25cm・横９cmの市販の白色封筒で、分厚く大きさの割にはずっしりと重みがあった。
差出人は実在の広告代理店となっていた。

郵便物は６階の制作センターへと運ばれた後、関連会社の女性社員（30歳・女性）が「重いので気を付けて」とたまたま居合わせた安達の所属事務所サンミュージックブレーン社員（31歳・男性）に手渡された。
男性社員が受け取ったその場で封筒を開封した瞬間、轟音を立てて封筒が爆発。
爆発音ともうもうと立ち込める煙で、制作センターは騒然となった。

この爆発によって、開封した男性社員は左手親指の先端が吹き飛ばされる重症。
女性社員も飛び散った金属片のような物で右腕に軽傷を負った。
近くに居合わせた安達のマネージャー（35歳・男性）も一時音が聞こえなくなる被害を受けた。
なお、安達本人は隣接する北本館のスタジオで年末年始番組の収録を行っており、怪我はなかった。

爆弾は封筒の中に単三電池、リード線、磁石、火薬などを仕込んだもので、開封と同時に爆発するよう計算されていた。

日本テレビは事件直後、18時からのニュース番組冒頭で現場の状況を報じた。
爆発のあったフロアでは、書類や事務用品などが散乱し、救急隊員によって手当を受ける重症の男性社員の様子、その近くで見守る動揺した関係者や、床に残る血痕などが生々しく放送された。

その後の調べで、爆発物が発送された郵便局などはわかったものの、犯人の特定に至ることなく2009年12月21日をもって時効が成立した。

なお、この事件の前後には、有名人宛ての爆弾事件が相次いでいる。

93年にはニッポン放送に同様の爆発物が届いていたことが明らかになった。

また、95年には東京都知事の青島幸男宛に送られた小包が爆発、開封した男性職員が重傷を負った東京都庁小包爆弾事件も発生した（この事件はオウム真理教によるものであった）。

これらの事件を契機に郵政省（当時）は、不審な郵便物にはＸ線検査を行うようになった。

P（投） ヤクルト－巨人死球合戦

「10.8決戦」、イチロー旋風などトピックスが多かったこの年の球界であるが、「事件」ということになればやはりこれだろう。

1993年、長嶋茂雄が巨人監督に復帰。
「長嶋劇場」の最大のライバルとして立ちはだかったのが、黄金期を迎えようとしていたヤクルトだった。

当時監督だった野村克也は長嶋巨人をバチバチに意識し、ことあるごとにメディアを使って長嶋批判を繰り広げ、様々な挑発発言も行った。

勢い、長嶋巨人VS野村ヤクルトの対決は、“90年代最大の因縁対決”として注目を集め、特に93・94年の２年間このカードは常に殺気立った雰囲気で展開されていた。

まず93年、巨人打線はヤクルトバッテリーの徹底した内角攻めに苦しめられる。
５月27日のヤクルト戦では本塁打を量産していた大久保博元が高津臣吾から死球を受け、左手首を骨折し、戦線離脱。

その次の対戦となった６月８日、富山市民球場での試合では初回、巨人先発・宮本和知が古田敦也を打席に迎えると、３球連続で内角を攻め死球をぶつけた。

次打者・広沢克己の二塁打で、その古田がホームへ突入。
クロスプレーで巨人の吉原孝介捕手に体当たりをかましたが、その行為に吉原が肘打ちで対抗。
詰め寄ったヤクルトのJ.ハウエルと吉原がもみ合いになって、それをきっかけに両軍ベンチが空っぽになる大乱闘となった。
レフト前にいた川相昌弘は飛び蹴りしながら乱闘の輪に突入。
中畑清打撃コーチがハウエルの後方からヘッドロックをかけると、R.ハドラーに首根っこを掴まれた長嶋監督が「お前ら暴力団か」と叫ぶシーンもあった。

13分の中断後、騒動のきっかけをつくった吉原とハウエルの２人に退場が宣告され、試合再開となったが、それから約３ヶ月後の９月19日、両チームは再び乱闘を繰り広げることになる。

この日も古田が胸元を攻められ、ハウエルは左肩に死球を受けた。
元木大介は本塁をついた際に古田に危険なタックルをするなど、不穏な空気が漂っていた。

８回、橋本清の投球はヤクルトの代打・金森栄治の背中の後ろを通す大暴投だった。
この投球の直後、ベンチから堀内恒夫投手コーチが飛び出し、金森のヘルメットを奪い取ったのを合図に、両軍ナインによる乱闘が始まった。
当時の金森はベンチのヤジ将軍として知られており、前日も巨人・堀内コーチを痛烈にヤジっていた。

ヤクルトの伊勢孝夫コーチがハドラーとともに堀内コーチに襲いかかる。
堀内コーチの眼鏡が吹っ飛び、ユニフォームもハドラーの怪力によって、ビリビリに引き裂かれてしまった。

金森は「選手に怒ってるんじゃない。上がやらせてんでしょ」と前日のヤジに対する報復と確信している様子がありありだった。
野村監督も「どう見ても故意」と憤慨した。

そして、この両チームの緊張状態がピークに達したのが94年５月11日、神宮球場での一戦である。

２回表、ヤクルト先発・西村龍次が、巨人・村田真一に投じた２球目はヘルメットの上から左側頭部を直撃。
もんどりうって後ろに倒れた村田が、すぐさま立ち上がると凄まじい形相で叫びながらマウンドに向かって歩き出そうとした。

ところが、３歩、４歩と歩を進めたところで、いきなり崩れ落ちた。
村田は昏倒し、そのまま担架に乗せられてグラウンドから運び出された。

これが序章となり、３回その西村が打席に立つと、木田優夫の投球が左でん部を直撃。
状況的に報復と思われても仕方がなかった。

そして７回、それでも続投していた西村のD.グラッデンへの２球目は内角高めのブラッシュボール。
ヘルメットを飛ばしながらのけぞったグラッデンが激昂しマウンドに向かおうとすると、背後から中西親志捕手が制止しようとして、もみ合いになった。

グラッデンの右アッパーが中西の左目に繰り出され、マスクが吹き飛ぶ。
たちまち両軍ナインが飛び出し、大乱闘となった。

この日も３度ブラッシュボールに襲われた落合博満（当時巨人）もヤクルトからではないが、死球による満身創痍の戦いを強いられていただけに珍しく興奮状態。
「だっていつも向こう（ヤクルト）が仕掛けてくるんだもん。おれが中日にいた時もいつも同じだ」と試合後コメントを残している。

グラッデンと中西は暴力行為、西村は危険球で退場となった。
派手に立ち回ったグラッデンは出場停止処分12日間と同時に両手の指を骨折して長期戦線離脱という代償を払った。

試合はヤクルトが5-1で勝利したが、試合後も両監督は収まらなかった。

野村監督は「木田の１球は故意だ。あれが故意でなければ、故意なんてない。最高裁に持っていかなきゃ分からんらしいな」と声を荒げ、中西の退場についても「巨人中心主義のセ・リーグの悪しき体質」と怒りをぶちまけた。

長嶋監督は西村の投球について「明らかに意図的。外に構えていた中西のミットが急に頭の内側に来た」と断定。
木田の死球も「目には目をですよ」と、事実上報復を認める発言をし物議を醸した。

この長嶋発言を伝え聞いた野村監督「それは大変な問題や！去年の（宮本の）古田への死球も報復やったんやな！」とさらにヒートアップした。

１試合に３人の退場者が出たのは、プロ野球史上２度目のことだった。
事態を重くみたセ・リーグは同月13日に緊急理事会を開催。
危険球の適用について、現在まで続く「故意・過失を問わず頭部に死球を与えた投手は即退場」というアグリーメントが設けられた。

ルール変更に至るほどの大騒動となった、まさに球史に残る乱闘事件であった。



https://youtu.be/qYMeZy0zGiE

おまけ

例年ならスタメン入り確実な事件も多くカットしなければならないほど層が厚いこの年。
切り捨てるには惜しい事件で２軍チームを編成した。
これらもごく簡単に紹介していく。

1（中） 品川医師射殺事件
2（遊） 住友銀行名古屋支店長射殺事件
3（右） 福岡美容師バラバラ殺人事件
4（一） つくば母子殺人事件
5（二） 愛知県西尾市中学生いじめ自殺事件
6（指） 宮崎県資産家拉致事件
7（三） ビートたけしバイク事故
8（捕） 東京都墨田区27歳女性行方不明事件
9（左） チマチョゴリ切り裂き事件
P（投） 城島健司強行指名騒動

1（中） 品川医師射殺事件

10月25日午前８時頃、東京品川区の京急本線青物横丁駅で野本正巳（当時36歳）に病院医長（当時47歳）が拳銃で撃たれ死亡した。
野本は以前この医師からヘルニア手術を受けたが、「自分は人体実験された」という妄想を抱くようになり、暴力団員からトカレフ型拳銃を購入し犯行に及んだ。
野本は精神病院の通院歴があり精神鑑定がなされたが、責任能力ありと判断され97年東京地裁は野本に懲役12年を言い渡した。

2（遊） 住友銀行名古屋支店長射殺事件

９月14日早朝、住友銀行名古屋支店長が自宅マンション10階の玄関先で、何者かに拳銃で眉間を撃ち抜かれて死亡した。
当時、住友銀行はバブルの不良債権問題に悩まされていた時期でもあり、その債権の多くが闇社会と関係の深い融資案件だった。
そのためヤクザ絡みの事件ではないかと噂されていたが、真相不明のまま09年に時効を迎えた未解決事件。

3（右） 福岡美容師バラバラ殺人事件

３月初旬、熊本・福岡の高速道路パーキングエリアや駅のコインロッカーから相次いで女性のバラバラ遺体が発見される。
犯人の江田文子（当時38歳）は自分と不倫していた男性と同僚である被害女性との関係を一方的に邪推した末に犯行に及んだ。
犯人が遺体を運搬する際、自動車ナンバー自動読取装置（Ｎシステム）にナンバープレートを読み取られたことが逮捕に大きな影響を与えたことで知られる現代的な事件である。

4（一） つくば母子殺人事件

11月３日、横浜市鶴見区の京浜運河からビニール袋に入れられ重しがつけられた女性の遺体と２体の幼児の遺体が発見された。
捜査が進むにつれ、捜索願を出していた夫であり父親の医師・野本岩男（当時29歳）の犯行であることが判明。
愛人問題等でかねてから夫婦仲が悪くなっていた妻と口論になり殺害、子供２人も父が殺人者となり残されることを不憫に思い殺害したという。

5（二） 愛知県西尾市中学生いじめ自殺事件

11月27日、西尾市立東部中学校の２年生の男子生徒が、自宅裏の柿の木で首を吊って死んでいるのを母親に発見された。
葬儀後、自室の机から「いじめられてお金をとられた」という内容の遺書が見つかり、その金額は少なくとも110万円とされる。
この手の事件では毎度のことであるが、学校や教育委員会の対応が問われ、社会問題と化した。

6（指） 宮崎県資産家拉致事件

宮崎県小林市の旅館経営者の男性がオウム真理教の信者である娘２人に財産収奪のために睡眠薬を飲まされ、誘拐された。
異変を察知した旅館経営者が事前に銀行口座の支払い停止措置を講じていたため財産収奪は失敗した。
旅館経営者は約５ヶ月間監禁され、そのうちの３ヶ月間は山梨県上九一色村の第６サティアンで薬物を注入され続け、14キロ痩せて歩行困難になるほど衰えていた。

7（三） ビートたけしバイク事故

８月２日午前１時40分、ビートたけしが原付バイクで東京都新宿区の安鎮坂付近を走行中に自損事故を起こし頭部に重傷を負った。
一命を取り留めたものの、長期の入院などにより約半年間に渡ってテレビ出演が出来なくなった。
退院時に会見を行ったが、この時点ではまだ顔面が麻痺しており大きく変形した状態であったため、大きな衝撃を与えた。

8（捕） 東京都墨田区27歳女性行方不明事件

９月２日夜、墨田区の実家へ出産で帰省していた嵐真由美さん(当時27歳)が１歳の娘を残して失踪。
姉の洋子さんには同級生に会うと言っており、真由美さんの知人だという男性から事情を知るような電話が来た。
2011年のTV番組で父親の取材中、背後に映った「洋子のはなしは信じるな」という張り紙で一躍有名になった事件。

9（左） チマチョゴリ切り裂き事件

５月から６月にかけて、登下校中の朝鮮学校女子生徒の制服・チマチョゴリが切り裂かれるという被害が日本各地で発生したとされる事件。
当初は主要な全国紙が報じていたが、最後まで報じていたのは朝鮮総連の発表をそのままニュースソースとして報道していた朝日新聞のみだった。
なお、この事件を調査していた在日三世のライターが翌年、自宅アパートで謎の死を遂げている。

P（投） 城島健司強行指名騒動

11月17日に行われたプロ野球ドラフト会議で駒澤大学への推薦入学を取り付け、プロ入り拒否を表明していた超高校級捕手・城島健司を福岡ダイエーが強行指名。
城島は王貞治新監督の説得を受け、ダイエー入りを決めたが、この件をきっかけにプロ入り拒否の選手はドラフト会議で指名できないルールが定められた。
当時ダイエーの編成トップは“球界の寝業師”こと根本陸夫だったこともあり、密約があったのではないかと騒がれた。


おわり